「フリーランスは時間・場所にとらわれない」は本当か
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本当に時間や場所の自由が得られるかといえば、思った通りにならない可能性もあります(写真はイメージ)=PIXTA
ITエンジニアという仕事は、PCやネットワーク環境さえあればどこでもできると思われていることが多いでしょう。実際、筆者がIT業界に入った2000年にはテレワークが採り入れられており、2005年にはフリーアドレス環境を体験しました。
今と比べれば通信環境はかなり貧弱でしたし、電源がない場所で仕事をするにはPCのバッテリーも3本持ち歩かなければならないような状態でした。今やフリーのWi-Fiでも速度は十分で、バッテリーも長持ちします。本当にどこでも仕事ができるようになりました。
こうなると、「特定の企業の社員になるのではなく、フリーランスで働きたい」と考えるエンジニアが出てくるのは自然なことです。ではフリーランスになることにはどんなメリットがあるのでしょうか。
むしろ時間に追われることもある
アン・コンサルティング(東京・渋谷)が2022年12月2日に発表した「フリーランスエンジニアへの転向意識調査」の結果によると、正社員として働くエンジニアのうち「フリーランスに興味がある」と回答した人の割合は40%。半数近くに上りました。
興味がある理由として同率1位になったのが、「時間にとらわれない働き方ができそうだから」「場所にとらわれない働き方ができそうだから」(いずれも56.7%)。時間や場所の制約なく働けることが大きな魅力であることが分かります。特に、建設や鉄道などテレワークの全面実施が難しい職場で働くエンジニアは、これが理由でフリーランスに興味を持つケースも多いでしょう。
もちろん、こうした理由でフリーランスの道を選ぶことを否定はしません。ただし、本当に時間や場所の自由が得られるかといえば、思った通りにならない可能性もあります。いざフリーランスになったときのリスクについて、想定の範囲を広げておきましょう。
まず「時間にとらわれない働き方ができそうだから」について。始業や終業の時間が決まっている会社員と比べれば、確かに自由度は高まるでしょう。しかしクライアントに設定される納期や、要求のスピード感は変わらないはずです。
会社員であれば、自分が手いっぱいなときは他のメンバーが肩代わりしてくれることもあります。しかしフリーランスになって1人で仕事を引き受けたら、そうはいきません。
筆者の知り合いのあるフリーランスの人は「クライアントに自分の仕事のペースを理解し、認めてもらって初めて、時間にとらわれない働き方ができるようになる」と言い切ります。それには一定の時間や実績が必要です。