「フリーランスは時間・場所にとらわれない」は本当か
技術者の働き方ホントの話セレクション例えば冠婚葬祭に伴って休みを取りたい場合。会社員ならそのための特別休暇が用意されているケースが多いでしょう。しかしフリーランスの場合は、請け負った仕事の内容やクライアントの企業文化によって、事実上休暇が許されないケースもあります。そんな企業とは付き合わなければよいという意見もありますが、そのクライアントからの収入が売り上げの多くを占めているのであれば、取引をやめるわけにもいきません。
時間の自由を確保するには、クライアントに自分の実力と仕事の仕方を理解してもらわなければならないでしょう。時間の使い方に限らず、仕事に対するスタンスや価値観、レスポンスのスピードや頻度など、自分の仕事のスタイルをまず自ら理解したうえで、クライアントに分かってもらう必要があります。
仕事を受ける側として、自分の都合や価値観をクライアントに押し付けるのはわがままだと考える人もいるかもしれません。しかし決してそんなことはないと筆者は思います。自由な働き方をしているフリーランスの人の多くが、そこまでクライアントに理解してもらったうえで仕事を楽しんでいると感じています。
結局自宅の近くで仕事をしている
「場所にとらわれない働き方ができそうだから」についてはどうでしょう。
最近では「ノマドワーク」という言葉をわざわざ使うこともないほど、場所にとらわれず働くことが普通になっています。場所にとらわれずに働くということは、自分にとって最適な場で働けるということだと考えられます。
では、最適な場とはどこでしょうか。最初は自宅で仕事を始める人もいますが、家では仕事に集中できないということもあります。家族との距離の取り方をどうするか、バランスも求められます。特に子どもがいる場合、子どもの年齢によっても自宅の使い方が変わってくるでしょう。
自分一人で法人を設立して、コワーキングスペースなどの場所を借りる人もいます。ただしコワーキングスペースも、混雑具合に加えて、事務所として登記できるかなどの条件を考慮すると案外選択肢は狭まります。さらに電話・郵便物の転送などのサービスも利用する場合、小規模オフィスの賃料とあまり変わらないこともあります。
最近では、企業の所在地がどこかは昔ほど意識されないようになっています。郊外の自宅の近くにワンルームマンションを借りる方が、都心のコワーキングスペースに行く交通費や賃料、交際費などを計算すると割安になることもあります。場所に縛られたくないと思いつつ、結局は自宅近くで仕事をすることになるわけです。
独立してフリーランスになるなら、「どこで仕事の考え事をするか」「作業はどこでするか」「どの場所でクライアントとコミュニケーションを取るか」などについては、事前に調べてイメージを持っておくとよさそうです。
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。