「元マッキンゼー」はなぜ強い 相次ぎ巣立つ起業家
キャリアコラム顧客を知り、次々に成果を上げてスピード出世した。しかし、製造業を担当した時、「このままでは町工場は消えてしまう。ものづくり分野にはまだまだ改善の余地がある」とあっさり退職し、17年にキャディを立ち上げた。事業は急拡大し、採用活動に追われる日々だ。同社は21年の日本経済新聞社の「NEXTユニコーン調査」で13位とベストテン入りをうかがうまでに成長した。
実は加藤氏を筆者に紹介してくれたのはマッキンゼー出身で、現在は独立系ベンチャーキャピタル(VC)のグローバル・ブレインのパートナーを務める鈴木祐介氏だ。電子メールで依頼すると、即座に元マッキンゼーの起業家やVC、スタートアップの役員ら10人前後の名前が次々に寄せられた。鈴木氏は東大卒業後、外交官として10年余り活躍したが、ビジネス界で人脈を築いたのはマッキンゼー時代だ。「卒業生は個性豊かで己の道を突き進むタイプが多い」という。
ビジネス界に広がるネットワーク
マッキンゼー出身者はつながりを非常に大事にする。人材やマネー、各業界の情報を必要に応じて共有し、一緒に事業展開するケースもある。ビジネス界全体に広がるアルムナイのネットワークこそが、マッキンゼー出身者の最大の強みと言えるだろう。
アルムナイのメンバーは華やかだ。経営者には南場氏のほか、エムスリー社長の谷村格氏、オイシックス・ラ・大地社長の高島宏平氏、日本交通会長の川鍋一朗氏、レノバ社長の木南陽介氏らがいる。いずれもデジタルなど最先端技術を活用し、医療など既存業界に新風を吹き込んだ面々だ。

武藤氏は「医療界を変えたい」とマッキンゼーの門をたたいた
ビジネス界以外にもアルムナイの輪は広がっている。在宅医療を手掛ける医療法人社団鉄祐会の理事長の武藤真祐氏。東大医学部卒で侍医も務めたエリート医師だった。しかし、「医療界を変えたい」と06年にマッキンゼーの門をたたいた。東大医学部出身では初の入社組だ。
武藤氏はプロジェクトマネジメントやチームビルディングなどスキルのほか、起業家精神を学んだ。「何より医師でもビジネスの世界でもやれる自信がついた」という。10年に在宅医療「祐ホームクリニック」を開業。オンライン診療のインテグリティ・ヘルスケア(東京・中央)も起業し、投資ファンドを活用した医療事業も手掛けるなど新規事業に次々に挑戦している。