近づいた経済学とビジネスの距離感 DXでも有効な力に
エコノミクスデザイン代表取締役 今井誠 (5)
「経済学」はビジネス最強の武器「DXの目的」の明確化
今、DXの目的に応じたチーム編成を、というお話をしました。そう、DXはひとまず始めればよいというものではなく、本来の目指すべきものは何か、そしてDXによって何がしたいのかを、分解し、定義しなければなりません。そもそも、自社でのDX推進の目的は何か。それを具体化していきます。たとえば、「営業の効率化」をしたい場合で考えてみましょう。ここでいう、営業の効率化とは、自社の何を指しているでしょうか? 今の水準のままで営業時間を短縮すること? 成約率の改善? 今の人員で成約数を増やすこと? まずは、自社での効率化とは何か、そしてそれはどうやって達成するのかを考えます。
ここまで考え続ければ、「効率化ツールを導入する」ということでは、自社の課題は解決しきれないことに気づくこともよくあります。あるいは目的によって、ツールの選択が間違っている可能性もあります。そもそも、そのツールではかなりのカスタマイズが必要かもしれません。
「データ」で過信してしまう
DXに際し、社内に存在するデータを活用したり、もしくはこれからデータを取得して活用したりする企業は多くあります。たしかにデータは、DXの重要な要素です。しかし一方で、そのデータが全く使い物にならないというケースもあります。実は、データの取得方法から再度検討が必要なケースも多々あります。
データは取得方法や前提条件などによって、目的に適したデータ分析ができないということが起こります。DXでデータを活用し業務改善をしていくためには、データ分析のためにその集め方から細部までこだわっていく必要があります。たとえば、各営業の営業方法を統一化していない中で、新規開拓のためにデータ分析しても改善はかなり限定的です。データの要因分析を行うためには、データ取得の前提条件から整えていく必要があります。「今データがあるからといって、そのデータを分析してDX推進」と考えているならば、それこそが失敗の原因に他なりません。データ分析は、データ取得の前提条件から検討することが重要です。
人材不足・労働時間問題・業績など、様々な課題が山積している今、DXを推進し業務効率化・改善することは必須です。ひとつひとつの課題を適切に分解して、本質的な課題解決を検討することが求められます。そもそも、多くの企業では課題が明確化されておらず、また学知にも「どの業界のどの課題に対応するのか」というラベルが貼ってあるわけではありません。こうした課題をクリアしていくことが、今求められているDXの推進を実現するのだと思います。