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「100回に1回は逆転できる」と思えるかどうか

――負ける恐怖心をどう受け止めますか。以前に「負けと知りつつ、目を覆うような手を指して頑張ることは辛く、抵抗がある。でも、その気持ちをなくしてしまったら坂道を転げ落ちるかのように転落していく」と話しています。

「受けに軸足を置く展開では、具体的に勝ちが見えてこないことが多いので、気持ちが折れそうになることがあります。そこで踏ん張れるかどうかで後の人生に大きな影響があると思います。不利な局面で100回に1回でも逆転できるのだと思えるか、100回に1回しか逆転できないと思うのかの違いです」

――タイトル戦では6回挑戦して逃しました。「勝てばタイトル獲得」という一局は8局もありました。大きく立ちはだかったのが3年先輩の羽生九段でした。

「羽生さんは最後まで何かを狙っている感じです。こちらが勝っていると思っている局面でも、諦めているのが最後まで感じられません。何回読み直しても負けという状況で、羽生さんは一手間違えたら逆転するという緊張感を醸し出していました。なかなかできることではありません」

――他人と比べるのが悪手で、そうでなければ自分を見失わないと説いています。

「能力が伸びる時期は人によって違ってきます。それでも、比べるという一番やってはけないことを皆やってしまいます。単純に比べるとその人の良さを見失います。能力とは本来もっているものと努力の掛け合わせだと考えています。将棋でも才能の『多い少ない』はきっとありますが、弱点は研究量でカバーできるでしょう。羽生さんや佐藤康光(九段)さんら自分より年長の棋士が頑張っているのに、自分ができないのは甘えになります」

「自分も、まだ伸び続けることが不可能ではないのかなと思っています。いつまでヤル気を持ち続けられるかは分かりませんが、長く続けようとは思います。上を目指すことと、40歳以上になって現状維持を狙うことは結局同じ結果も少なくなく、どれだけやってもダメなものは全然ダメという時期もあります。しかし結局どれだけ頑張ったか。それ以外に納得する材料はありません。諦めることはやることをやってからと割り切っています」

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