運次第の資金調達はフェアでない VBを世界へ後押し
FUNDINNO代表取締役CEO 柴原祐喜氏(下)
キャリアの原点個人がベンチャーを後押しする流れを
日本経済再生の鍵を握るのはベンチャーと言われて久しい。岸田政権も成長戦略の柱に「スタートアップへの徹底支援」を掲げ、ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の投資額自体も過去10年増えている。だが、課題は人事労務ソフトのスマートHRなど一部の著名ベンチャーや、IPO直前の成長後期の企業に資金が集中してしまっていることだ。柴原氏は「そこを解決したい」と力を込める。
「当社では、創業間もないシードやアーリーと呼ばれる段階の企業に特化して支援しています。さらに、地味でも可能性を秘めた日本中の中小企業を応援していきたいと思っています。海外を見ればイギリスでは株式投資型CFでの調達総額は800億円超、アメリカでは250億円超にのぼります。日本でも個人がベンチャー企業を後押ししていく流れをより大きくしていきたい」
その一環として同社は21年12月、未上場のベンチャー企業の株を個人投資家がインターネット上で売買できる日本初の取引市場「ファンディーノマーケット」をスタートさせた。これまでベンチャー企業に投資した株主は、投資先が破綻してしまうかもしれないリスクを負いながら、その企業がIPOやM&Aをするまで10年近く待つしかなかった。今回、いつでも自由に売却し換金できる仕組みを作ったことで、より多くの投資家を呼び込めると柴原氏は期待する。ファンディーノマーケットではスタートして1カ月で4銘柄37の取引が成立。7.8倍の値上がり事例も生まれた。

未上場のベンチャー企業の株を個人投資家がインターネット上で売買できる日本初の取引市場「ファンディーノマーケット」の開始を発表、社員と記念写真をとった
起業から6年余り。戦いはこれからだと柴原氏は表情を引き締める。
「課題は永遠に続きますし、難易度も毎年上がってきます。もう成長しなくていいと決めれば心穏やかな生活が送れるかもしれませんが、リスクテイクしなければ、この世界はリターンも成長もありません」
かつて日本からはトヨタ自動車やホンダ、ソニーなどグローバルなベンチャー企業が生まれた。「21世紀に再び日本からグローバル・ベンチャーを世界に送り出す」。それが起業家、柴原氏の夢だ。
(ライター 石臥薫子)