変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

グローバル・タレントになるための入り口としては、全期間・全社員に対して、TOEIC L&Rの一定スコア獲得を目的にしたアプリや英語のグループレッスンなど、1人当たりの単価が安価な研修を提供する場合が多いです。これは先に述べたように、研修の費用対効果の観点と社員に対しての公平性の観点からです。

入社からある程度の期間が経つと、グローバル・タレント育成の観点から、海外赴任に一定数の社員を送り出す必要が出てきます。業績や態度の面で問題がなく、TOEIC L&Rのスコアが一定以上あれば、その社員に3カ月前から赴任前研修を行う企業も多数あります。

グローバル・タレント・マネジメントを強く意識している企業は、3カ月前ではなく6ヶ月〜1年前に赴任前研修を実施するところもあります。将来の海外赴任者候補の母集団から毎年10人程度を選抜している企業もあります。

また、VERSANTスピーキングテストのスコアなどを尺度に、スピーキング能力を重視してグローバル人材の育成を図っていく企業もあります。一つ一つのステップごとに選抜し、ステップが上がるごとに、グローバルに活躍するための広範囲なビジネススキルを身につけるためのチャレンジ的なプロジェクトへの参加や、海外赴任などの実務的な経験を積ませることもあります。

以上見てきたように、英語のスコアや入社年次といった数値に基づいた英語研修ポートフォリオを作り上げることで、限られた研修予算の中で、それぞれの企業戦略に合致した英語研修のデザインが可能になります。経営レベルの方は、一度自社の英語研修のポートフォリオをご自身なりに描いてみていただきたいと思います。

ここまで私が説明してきたアプローチは、「インストラクショナルデザイン」と呼ばれて米国で普及している手法です。日本のインストラクショナルデザイン研究をけん引してきた熊本大学の鈴木克明教授は「教育活動の効果・効率・魅力を高めるための手法を集大成したモデルや研究分野、またはそれらを応用して学習支援環境を実現するプロセス」と定義しています。

英語研修を実施する必要のある実務者の方は、インストラクショナルデザインについても学ぶことをお勧めします。

三木 雄信(みき たけのぶ)
英語コーチングスクール『TORAIZ(トライズ)』主宰、一般社団法人日本英語コーチング協会(略称JELCA)代表理事。1972年福岡生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱地所を経てソフトバンクに入社。2000年、ソフトバンク社長室長。2015年に英語コーチング・プログラム『TORAIZ(トライズ)』を開始。日本の英語教育を抜本的に変え、グローバルな活躍ができる人材の育成を目指している。主な著書に『海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる』(PHP研究所)『超高速 PDCA英語術』(日本経済新聞出版)『ムダな努力を一切しない最速独学術』(PHP研究所)『【新書版】孫社長にたたきこまれた「数値化」仕事術』(PHP研究所)など。

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