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元首になるロールプレイングゲーム

地政学とは「その国の元首になる"ロールプレイングゲーム"」だと著者はいう。国のトップに影響を与える要素に、地理とそこから派生する6つの要素(気候・周辺国・民族性・産業・歴史・統治体系)があり、この条件を入れ込んで考えるトップの思考の枠組みが地政学の思考法だと定義する。単純な善悪やイデオロギー的な価値基準では見えてこない意思決定を形作るものが地政学からは見えてくる。これが世界情勢はもちろんビジネスの背景を探る上でプラスに働くという。

こうした形で思考法の本質を伝えた上で、中盤以降では、日本、米国、ロシア、中国、その他の地域に分けて各国の地政学について見ていく。米国を巨大な島国と見る視点、内陸・大国という視点から見えてくる中ロの国家戦略など、興味深い知見をいろいろと見つけることができるだろう。

「あらゆる観察対象には、白も黒も同時に存在する」とも著者はいう。多様な視座を手に入れ、変化も加味しながら世界を見ていく。そんな思考法の本質を知ることは、グローバル展開や投資判断などの局面で多くのビジネスパーソンの助けになりそうだ。

「2月のランキング上位は息の長い売れ筋が多かった。新刊の中ではこの本の動きがよかった」と店舗リーダーの河又美予さんは話す。ロシアによるウクライナ侵攻は1年が過ぎても、なお終わりが見えない。そんな情勢も手伝って、ビジネス街でも地政学への関心が続いている様子だ。

上位に息の長い売れ筋

それでは、ランキングを見ていこう。今回は2月のビジネス書ランキングを取り上げる。

(1)ANA苦闘の1000日高尾泰朗著(日経BP)
(2)Peachのやりくり井上慎一著(東洋経済新報社)
(2)たった1人からはじめるイノベーション入門竹林一著(日本実業出版社)
(4)年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資配当太郎著(クロスメディア・パブリッシング)
(5)必ずできる、もっとできる。大八木弘明著(青春出版社)
(5)キーエンス解剖西岡杏著(日経BP)
(7)地政学が最強の教養である田村耕太郎著(SBクリエイティブ)
(8)限りある時間の使い方オリバー・バークマン著(かんき出版)
(9)最新マーケティングの教科書 2023日経クロストレンド編(日経BP)
(9)こうして社員は、やる気を失っていく松岡保昌著(日本実業出版社)

(リブロ汐留シオサイト店、2023年2月1~28日)

1位の『ANA苦闘の1000日』と2位の『Peachのやりくり』はともに航空会社を扱った本。「イノベーションとは、何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか」を解き明かした同数2位の『たった1人からはじめるイノベーション入門』を含めてまとめ買いが入り、上位に来た。

今回紹介した地政学の本は7位だった。上位10冊のうち、23年刊行の本は地政学の本と4位の『年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資』、6位の『必ずできる、もっとできる。』の3冊で、息の長い売れ筋が大半を占めた。

(水柿武志)

地政学が最強の教養である “圧倒的教養”が身につく、たった1つの学問

著者 : 田村耕太郎
出版 : SBクリエイティブ
価格 : 1,870 円(税込み)

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