全社一律ワークスタイルは幻想 多様化時代のチーム像
KPMGコンサルティング 油布顕史プリンシパル
キャリアとお金を考えるまた、別の会社では社員全体のチャレンジ意識を高めるため、OKRを導入することにしました。OKRとは、企業や組織における目標管理の手法のひとつで、Objective(目標)とKey Results(主要な結果)を設定します。社員の意識を変え、組織をドライブさせるうえで有用なツールとしてグーグルやフェイスブック(現メタ)が採用し注目されています。
この会社に関して特筆すべきは、目標管理の形骸化を回避するためだけではなく、右肩上がりの業績を前提にして目標や結果を考えるというあしきカルチャーそのものを改める仕組みとして、OKRツールを導入した点です。
かつては、あらゆる仕事の仕上がり(結果)について「成功していなければ認められない」「成功したことにする」という暗黙の了解がまん延していたといいます。さらに、上層部から社員に対し短期間で成果を上げることへの期待感が強すぎ、すぐに成果を上げないと評価されないことを知っている社員は、時間や手間のかかるチャレンジを避けるといった課題を抱えていました。このようなカルチャーを変えなければ、OKRは機能しないと考えています。
チーム全体でパフォーマンスを上げるカルチャーに作り替えるには、OKRというツールを入れるだけでは解決できるとは限りません。これまで長年にわたって蓄積されてきたルールをあぶり出し、さらには壊す覚悟が不可欠です。
多様化の時代に求められるワークスタイル
多様化の時代のワークスタイルを考えるうえでの大前提として、もはや全社一律のワークスタイルを求めてはいけない、という点を強調したいです。そのうえで、それぞれの組織の業務特性によってワークスタイルを検討するのがよいでしょう。留意すべき点は、「組織/チームとして何を重視するか」を明確にすることです。
例えば、総務・経理・人事といったバックオフィス部門では、効率性、他部署とのコラボレーション、現場部門の管理職や社員と知り合う機会を重視する傾向があります。営業主体の部門では、パフォーマンスを重視した評価、個人の営業活動にマッチした働き方を重視します。企画系や研究開発系の部門は、どれだけ付加価値を出せたかを重視し、個人の裁量や働く自由度を重視するかもしれません。
次に、組織ごとに重視する項目が明確になったら「変えない部分」と「変えるべき部分」を明確にします。日本のワークスタイルでは、優先度の低くなった業務を捨てられずに積み上がっていく傾向があるため注意が必要です。