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平坦化する賃金カーブと将来不安

多様性が広がる中で、成長したい人とそうでない人が分かれるようになりました。ハードワーク&成長を求める人もいれば、ゆるワーク&非成長(たとえば安定)を求める人もいます。それらを選べる状況が整っているのなら問題ないはずです。

18年に国会で可決され19年から順次施行された働き方改革関連法や、20年からのコロナショックによるリモートワークの普及もあいまって、私たちの働き方はずいぶんと変わってきました。業界や企業規模にもよりますが、多くの人にとって、働きやすさはかなり改善されたのではないでしょうか。

しかし確実に進んでいる変化があります。40~60歳にかけての年収引き下げによる賃金カーブの平坦(へいたん)化と、60歳以降年収の増加です。経済団体からの提言を踏まえ、大企業を中心にこのような変革が確実に進んでいました。有名な取り組みとしては、組合との合意を経て13年から同様の改革を進めていたNTTの事例などがあります。

つまり、60歳以降も企業側で雇用責任が生まれたため、40代以降の給与を引き下げてゆく動きが強まっているのです。

 ただし、一律で下げるというよりは、期待以上の成果を出し続けている人の給与はむしろ引き上げ、そうでない人の給与を引き下げる、メリハリの効いた評価報酬制度の導入が一般的です。

それらの改革が今実際に統計上にも反映されつつあります。そして、20代~30代の若手社員にもその影響が出始めているのが、ゆるブラックというキーワードがあらためて取りざたされるきっかけではないでしょうか。

それは、漠然とした将来不安の広がりです。

不安は中小企業から大企業に移りつつある

かつてブラック企業と言われていた企業の大半は、大企業よりも中小企業でした。メディアでは労働災害を起こした大企業がクローズアップされがちでしたが、中小企業ではそもそも法律を守る気がない経営者も多くいたからです。サービス残業の強制や、経営者による脅しや暴力なども中小企業の方が圧倒的に多かったのです。ただ、そこで働いている社員数がそもそも少なかったので、表ざたになることがなかったわけです。

しかし今回ゆるブラック企業として例をあげられているのは、むしろ大企業の方です。

その原因を想像すると、まず働き方改革をしっかり進めてきたかどうかがポイントになりそうです。遵法精神にのっとり、働きやすさや多様性を尊重した改革を進めてきた企業が、なぜ、ゆるブラック企業になったのでしょう。

そこには先ほど示した、賃金カーブの変化があります。

働きやすくなったけれども、上司や先輩たちからは、給与があまり増えないとか、早期希望退職制度に応募するかどうかといった、不安交じりの話を聞くようになる時期とちょうど重なるからです。

働きやすくなったその先に、バラ色の未来が待っているのなら、誰しもその状況を享受するでしょう。しかし働きやすさのその先に、増えない給与やリストラが待っているとしたら。

これからの人生を楽しもうとする人ほど、これからもこの会社にい続けていいのか、と疑問を持ってしまうのは当然のことかもしれません。

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