変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

こういう学生は、昔から少なからず存在しました。IT志望の学生からは「いずれ起業したい。最初の就職先は大手がよいのか、いきなりベンチャーがよいのか」などの質問を受けていました。「なんだ、転職前提で就活しているのか」と筆者が新鮮に感じたのは10年以上前のことです。

そうした学生が以前よりも増えているというのが、最近の傾向でしょう。これから入社する企業も決まっていないのに次の心配までするとは、いったいどんな心境なのかと不思議に思う方もいるかもしれません。

学生から受ける相談からは、大きく3つのパターンが見えてきます。1つは就職先とのミスマッチの可能性を心配している人。入社した会社が自分に合わなかった場合は辞めて次に行こうと最初から決めている場合です。

2つ目は、キャリアアップの目的。1社目でスキルや経験を蓄積して、さらなる活躍の場を探したいというケースです。そして3つ目が、終身雇用を信頼できないというものです。いつ解雇されるか分からない、だったらどんなときにも自分を守れるように転職の心構えをしておきたいと考えているのでしょう。

入社する前にミスマッチを心配する

1つ目のミスマッチについては、心配する学生の気持ちも分かります。実際に入社後ミスマッチに悩む若手社員もいます。筆者がキャリア相談でよく聞くのは「やりたい仕事ができない」という悩みです。

しかし「やりたい仕事って何?」と聞き返すと、自社内ではどの部署でもできないようなテーマを話す人もいます。このようなミスマッチは、就活の時点でよく企業研究をすれば防げる可能性が高いでしょう。そのためにも、気になる企業のインターンシップなどには積極的に参加することをお勧めします。

社風が合わないというミスマッチもあります。社風は仕事内容のようには具体的に見えないものですが、入社後の生活には確実に影響を与えます。キャリアや給与にこだわる人がいる一方で、「自分に合う雰囲気の会社で働けるなら、仕事内容は何でもいい」と思っている就活生もいるでしょう。

社風こそ、その会社の人と接してみないと分かりません。インターンシップやOB訪問などを通じて、そこで働いている人と直接話す機会をつくるのが望ましいでしょう。

いずれにしても、就職活動と同時に転職のことまで考えなければいけないとは、世の中も複雑になってきたものです。

天笠 淳(あまがさ・あつし)
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。
[日経 xTECH 2023年3月9日付の記事を再構成]

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