プロ経営者の失敗に学ぶ 転職幹部のやってはいけない
経営者JP社長 井上和幸
次世代リーダーの転職学パターン②「次のキャリア」しか考えていない幹部は総スカン
転職管理職(部長・課長)には、「その会社に骨を埋める覚悟で」着任する人と、そうでない人がいます。
「この会社で担える役割・テーマをライフワークとしたいです」。そんな気持ちを抱いた人を、企業は欲しており、ぜひ採用したいと思っています。
以前の当コラム「30~50代の転職 ポストコロナに求められる3つの常識」の中でも、「『終身雇用マインド』で転職せよ」というお話をしました。もちろん、しがみつくような雇用ありきでの終身雇用を指しているわけではありません。経営幹部や管理職においては、ある面、青臭いミッションやビジョン、パーパスへのコミットメントがあるリーダー人材に絞って採用したほうがいい。それはそのまま、自社の従業員たちへの求心力ともなり、組織エンゲージメントの強化に直結するからです。

幹部としての転職で失敗しないためには(写真はPIXTA)
経営職(取締役)でいえば、その職は一定有期の役割。幹部であっても「定年まで」を前提にする人ばかりではないのは時世柄ごもっともです。しかし、着任時点から「次の自分のキャリア」ばかり考えているようなトップや幹部に、社員たちの心はついていくでしょうか。
プロ経営者が失敗するパターン②は、自分のことしか考えていないトップに従業員がついてこないケースです。
最近、メディアに登場するプロ経営者たちの中で、在任中から次のキャリアを口にしたり、転職渡り歩き術に関する自著を出したりするケースが目につきますが、私見としてはいかがなものかと思います。
従業員たちから、このような経営者や管理職が自分たちの会社に転職してくることは、どう見えているでしょう? 少なくとも、なんだかなぁという感じでしょうし、愛社精神の強い社員たちが多くいる会社であれば、そのような脇見ばかりしている上司に対して憤りを感じますよね。
パターン③プロパー社員の軽視はNG
転職管理職(部長・課長)には、これまで自社を支えてきた従業員たち(プロパー社員)への愛情を持って着任する人と、そうでない人がいます。
プロ経営者が着任した企業が、それ以前とは打って変わって、続々と幹部クラスの人材が外部に流出するようになるという事象を、私はこれまで何度も見てきました。
プロ経営者の着任で、叩き上げのプロパー人材で主要なポストが占有されていて組織活力や柔軟性に欠けていた企業が、よい意味でも人材の代謝が活発になるというケースももちろんあります。ただ一方では、それまで愛社精神をもってその会社を支えてきてくれた中核人材が、せきを切ったように外部に飛び出し始めるということもあります。
後者の事象が発生するケースでは、大抵の場合、着任したプロ経営者が、内部の幹部を登用せずに、自分が好みの外部人材を次から次へと招き入れ、それまで支えていた幹部をどんどん外してしまうようなことをやっています。
以前ある企業で、外部招へいで着任した経営トップの方から幹部の外部採用についてご依頼をいただき打ち合わせを行った際に、脇にいらっしゃるプロパーの人事部長を前に、「いやー、うちは本当に、内部に使える幹部が全然いないんでねー」と臆面もなくおっしゃっていたのを、ヒヤヒヤしながら聞いた経験があります。
プロパー社員をダメ人材扱いして、自分の子飼いを外部からぞろぞろ連れ込む人、社内での自分の立ち位置を盤石にしようと既存社員たちにマウントを取るトップや幹部が、従業員たちの総力を結集して事業を成長させたり変革したりすることができるでしょうか?