変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

プロ経営者が失敗するパターン③は、プロパー社員を信じず外様ばかり重用して、組織が空中分解するケースです。

これもこの連載で折々事例をご紹介してきましたが、「俺のほうが上だ」「俺が教えてやる」というようなマウント型の転職管理職は、総じて人間関係部分でつまずき、成果を上げることなくその会社を去ります。

逆に、当社経由で着任いただいている管理職の方々を拝見していても、プロパーの方々とすぐに打ち解け、心を共にしてグッド・コミュニケーションを図られている人たちは、プロパーの方々が味方となってくれてとても仕事がしやすそうですし、周囲からの信頼も得て生き生きとご活躍されていらっしゃいます。

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4月21日の決算説明会で日本電産の関氏は、COOに戻ったことについて「正直悔しい。振り返ると、やはり日本電産の各事業を見ながら、社長業、CEO業をやって、向かい風を跳ね返す力がなかったのは事実。会長との実力差を見た。特徴ある日本電産に社長でぽっとはいる難しさを実感した。実際の経営力の習得に時間をかけすぎた」と語りました。

やはりプロ経営者はダメだった。結局オーナーはトップを手放せないのだ……。そう語ることは簡単ですが、永守氏は、経営トップはあくまでも「出せる事業成果に応じた役割」であること、敗者復活もあり得ることを強調しています。

関氏は「チームの意識改革をして、しっかり結果を出したい。経営はすべて結果だ。頑張ったねではうれしくない。頑張ったかどうかは語られなくても、すごいことをやってきたということで認めてもらえるようにやっていきたい」とも語りました。

そんな関氏のリベンジとCEO復帰を願っておりますが、率直に言って、私はこの関氏の語り口に不安を覚えます。鍵は、自分のバリューアップよりも、自社・事業・従業員たちの社会的価値向上を大切にすること、また、自分が認められたい思いよりも、事業・従業員たちの成功が第1であるというマインドで仕切り直せるか否かではないかと思います。

そしてこの関氏の言葉は、そのまま転職管理職(部長・課長)がいかなる心境と姿勢で、新天地での責務に取り組むべきかについて、反面教師としても教えてくれているのです。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します

井上和幸
経営者JP 代表取締役社長・CEO。1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。https://www.keieisha.jp/ 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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