灘の神童、大人になってコンビ起業 ネットで教育事業
キャリアコラム東大志望先はサイコロで決定

東大で薬学を学んだ趙さん
東大のどの科類を受験するかも高1の時にサイコロで決めた。「目が1なら文一、6なら理三。弁護士でも医者でも何でも良かった。ただ、6なら必死で勉強しないといけないので、少し憂鬱だったが、5の理二だったのでホッとした」という。東大入学後、建築学か薬学か迷った末に難関の薬学部に進学、大学院に進み、修士を修了。本来なら国の研究機関や製薬大手に就職するが、再び博士課程に進もうかと迷い、就職活動に出遅れた。
なんとか20年秋入社枠で大手コンサルの内定をもらった。修了後に半年ほど暇ができたので、シンガポールでインターンをする予定が、コロナで頓挫。その時、前田さんが米国から突如戻ってきたのだ。新宿のカフェで一緒に起業しようと口説かれた。
国際五輪で外国人の彼女をつくったり、東大の志望先をサイコロで選んだり、通常の高校生ではあり得ないことやるのが灘高生の醍醐味だ。「ガリ勉はバカにされ、面白い生徒が一目置かれるのが灘の文化」といわれる。そういう意味では起業に挑む2人は灘の新しい王道を走っているのかもしれない。
子供向けネット教育、登録世帯4千200件突破
二人三脚で創ったスコラボは、「子供が学びを好きになる場」をテーマにしたオンライン学習サービスだ。決して受験学習向けではない。「ゲームで量子コンピューターの世界へ」、「宇宙人に地球を説明しよう」などユニークな講座を次々開いた。講師陣には国内外の有名大学の在学生や卒業生などの専門家90人あまりが集う。サービスを開始して1年余り、登録世帯数は4200件を超えた。
「灘中に合格するためには国語も算数も理科もできないとダメ。しかし、スコラボは関係ない。算数でもプログラミングでも、自分の好きなことを自由に選んで学べる。生徒と先生をマッチングして最適の師弟関係を築き、いつの間にか魅力的な人材が育つ仕組みだ。次世代の教育をリードしたい」と前田さんは強調する。
灘の仲間が再集結、元教員も参加

神戸市の灘中学・高校
試行錯誤しながら、新たなサービスを模索してきた前田さんと趙さん。趙さんがツッコミなら、前田さんがボケという関係。時には激しく議論し、ぶつかり合うが、最後にいい案が出てくるという。サバサバした関係という名コンビ。関西出身の2人の会話は周囲からみれば、お笑いコンビのようにうつるかもしれない。
灘の神童は、大人になり、コンビで教育起業家になったわけだ。親世代からは「なんで灘を出て起業家に」と不思議がるだろう。まして2人は日米トップ大でも優秀な成績を修めたピカピカの人材だ。
しかし、前田、趙コンビのもとには灘の仲間が再集結しようとしている。同級生の小野靖史さんもエンジニアとして仲間入りした。フルタイムの5人のメンバーのうち3人が灘出身。特別講座などのセミナーには灘の元教員も登場する。次世代の異才が集う「ネット灘高」が生まれるかもしれない。
(代慶達也)