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◆難関資格にチャレンジする中で、経営の視点を持てるように

「ITストラテジストの合格発表の日、休み時間にドキドキしながらスマホで試験の主催団体のウェブサイトにアクセスしたんですが、受かったと知って自分が一番びっくりしました。試験はやるだけやってみたという感じで、正直手応えはなかったんです。でも他の受験者に比べて経験は浅いながらも、物事の捉え方、考え方は間違っていなかったんだと自信が持てました。合格を上司に伝えると、え、そんなに?と思うほど驚きながらも喜んでくれて、本当にうれしかったですね」

システム開発という未知の世界に自ら足を踏み入れ、さらに難関資格まで取ったことで、西出さんの中では、これまで見えなかった景色が広がり始めた。

「同じ銀行でも、成長するためにどの分野に注力するのか、どういう経営課題に優先的に取り組むかによって、生み出すサービスや人員配置も変わってきます。例えば、ある部署のコスト削減が課題だとすれば、その業務を自動化できるシステムを導入し、そこにいた人員を別の利益を生む部門に配置換えするという風に、経営戦略とシステムは密接につながっているんです。そういう経営という視点からシステムを考えることができるようになったのは、大きな変化だと思います。もし、開発の作業にだけに追われていたら、こういう視座は持てなかったでしょうね」

15年に始まった次世代システム開発のプロジェクトは、22年5月に稼働開始を予定していたものの、近年のデジタル・トランスフォーメーション(DX)やフィンテックの新潮流に対応するため、現在も続行中だ。そして西出さん自身のリスキリングも続いている。

世界で広く使われている基本ソフト(OS)であるLinux(リナックス)の技術者を認定する国際資格LPIC(エルピック)は、この10月までに3段階あるレベルのすべてに合格した。さらには、中小企業診断士の資格取得も計画中で、「IT分野も含め、総合的な経営戦略を立案する能力や、銀行員として有益なスキル・知識を習得したい」と意欲を燃やす。

今後のキャリアについて、西出さんは次世代システム開発のプロジェクトが終わっても、引き続きシステムの領域で会社に貢献して行きたいと考えている。「入行した時点では想像もつかなかったキャリアですけどね」と笑う西出さんは、リスキリングにまだ踏み出せない人たちにはこうエールを送る。

「初めての分野に挑戦するのは誰でも不安だと思います。でもリスキリングすることできっと視野が広がり、会社の全体像や自分の仕事の意味を捉え直すことができる。ぜひチャレンジしてみてください」

(ライター 石臥薫子)

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