自分の強み知りスキルを伸ばす 落とし穴は食わず嫌い
ビジネススキル強化メソッド (5)
ビジネススキル強化メソッド◆ 馬に生まれたのに木に登るな
不得意なものはキッパリ諦める
繰り返しになりますが、自分が得意なことをさらに伸ばしていくアプローチは、学習のハードルが低い上に、個性的な人材づくりにつながります。特にスペシャリストを目指す方にはお勧めのやり方です。
そのためには、自分の不得意なものには手を出さない、という割り切りが必要になってきます。スキルアップにおける選択と集中です。
たとえば、ある人が部下を持つようになったのでコーチングを習ってみました。ところが、傾聴も質問もまるでうまくできません。いくらやっても、結局自分がしゃべってしまうのです。
だったら、相手の思いを引き出すスタイルをキッパリと諦めて、こちらの思いのシャワーを浴びせるスタイルに特化するほうが賢明かもしれません。そう判断して、リーダーシップやプレゼンのスキルに磨きをかけることを考えるのです。
選択と集中をするには、今の自分を受け入れなければなりません。それは、世間並みが大好きな日本人にとっては、言葉で言うほど簡単ではありません。
ある学者から「馬に生まれたのに木に登るな」という言葉を聞いたことがあります。「○○である」と「△△になりたい」は必ずしも一致しません。どうしても、○○であることを見失い、△△を夢みて要らぬ苦労をしてしまいがちになります。
潔く捨てる勇気が持てるかどうか。それが、このアプローチを取るときに重要になってきます。

食わず嫌いにならないように
個性的な人材というのは、偏った人材ということもできます。うまくはまる仕事が見つからないと、使いづらいと思われる場合があります。せっかく身につけたスキルが、業務の中ですぐに役立たない可能性もあります。
何より食わず嫌いを生むのがこのやり方の最大の弱点です。早々に、自分の能力を「こんなもんだ」「自分には無理」と割り切ってしまうと、新たな成長の芽を摘んでしまいます。
苦手なことでも努力を続けていけばいつかモノにできるかもしれません。今まで気がつかなかった意外な能力を発見することも少なくありません。スキルの幅が広がれば仕事の幅も広がります。苦労して習得した経験は自信にもつながります。
こう考えていくと、あまり若いうちに「自分は○○だから」と決めつけるのはお勧めできません。若い間は貪欲にチャレンジし、ある程度仕事ができるようになってから絞り込んでいくのが賢いやり方だと思います。
組織コンサルタント。日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ビジネススキル図鑑」「ビジュアル ビジネス・フレームワーク[第2版]」など。