SDGsやダイバーシティ…女性リーダー、新領域で輝け
キャリアコラムサステナブル分野などで女性役員の引き合い強く

SOMPOホールディングスの下川亮子執行役は新しくできたグループCSuOに就任した
実際、企業は今、SDGsやウェルビーイング(多様な人々の幸福)といった新しい経営課題に向き合っている。女性取締役などを企業に紹介するWaris(東京・千代田)でも、サステナブル(持続可能)分野などの人材の引き合いが強いという。田中美和共同代表は「これらの分野はCSR(企業の社会的責任)や広報担当など女性の多い領域から輩出されるケースが多く、女性にチャンスが開かれている」と話す。
SOMPOホールディングスは21年8月にサステナビリティ担当(CSuO)を設置し、下川亮子執行役が就任した。ゴールドマン・サックス証券や日本マクドナルドなどでのキャリアを経て、16年にSOMPOホールディングス子会社に入社した。下川さんは「グローバル市場を狙うならいち早く取り組むべき課題。非財務分野の価値を見える化して企業価値につなげていきたい」と話す。
駐日大使との面談通じ、人脈拡大
こうした領域を女性活躍の舞台とするため、情報交換や人脈づくりの新たな場を設ける動きも出ている。
女性活躍推進を支援するNPO法人J-Win(東京・千代田)は、20年から会員企業の女性役員に駐日女性大使がメンターとなって助言や指導をする事業を進める。定期的な面談を通じて国際的な視野を養い、各国の女性役員らとのネットワーク作りにつなげる。
ロールモデルの少なさは、女性がキャリアアップを目指す上で大きなハンディだ。SDGsやダイバーシティなどの領域で先行する海外との人脈づくりが、今後に役立つ。

金融庁と東京証券取引所は21年にコーポレートガバナンス・コードを改訂し、取締役会にジェンダーや国際性、職歴などの多様性を求めている。経団連も30年までに役員の女性比率を30%以上に引き上げることを目指す。
ただ、実際の歩みは極めて遅い。日本の場合、企業の女性役員比率は1割程度。海外では欧州を中心に3割を超える国も少なくない。内閣府の調べでは、東証1部上場でも約3分の1の732社で女性役員が不在だ。
競争から共生の時代。女性自身が新たな領域でのリーダーを目指すとともに、企業側も組織のあり方を問い直すことが必要だ。21世紀職業財団の座間美都子事業推進部長は「外部から求められてやるのではなく、企業を継続的に発展させるために組織を変え、ダイバーシティを強みにするというトップの覚悟が求められる」と話す。
人事シートの記入項目として、資格取得などのほかに「アルコールは飲めるか」「ゴルフはできるか」といった内容を記入させる企業は今もある。昇進にどう影響するのか定かではないが、ある女性管理職は「毎年記入するたび『そろそろゴルフをやらないと先はないのかな』と考えてしまう」という。
伝統的な男性中心の企業コミュニティー、いわゆる「オールド・ボーイズ・ネットワーク」は平日の酒席と週末のゴルフで形成されるといわれる。組織の多様性を推進し、イノベーション創出につなげるためには、こうした企業風土の見直しも欠かせない。
(編集委員 中村奈都子)