産後パパ育休の大きな効用 東京大学教授・山口慎太郎
ダイバーシティ進化論
ダイバーシティこの10月から「産後パパ育休」が創設され、既存の育休制度とは別に、男性が子どもの出生から8週間までの間に育休を取れるようになった。既に4月から企業側に課されている制度説明や取得意向確認の義務化とあわせて、男性の育休取得が進むことが期待されている。
残念ながら、実際の男性育休取得率は2021年度で14%と低い水準にとどまっている。今後はこの数字を高めていくことはもちろん、育休の取得期間を延ばしていくことも課題だ。男性の育休取得期間は2週間未満が52%だが[注1]、多くの男性が1~2か月の育休を取るようになれば、世の中も目に見えて変わってくるだろう。
1~2か月の育休でいったい何が変わるというのか、と思うかもしれない。しかし、1~2か月の育休は、男性本人のライフスタイルのみならず、妻の働き方や、子どものジェンダー観も大きく変えるようなインパクトを持つものなのだ。
カナダの研究では、父親が育休を取得した結果、子どもが3歳になった時点での父親の家事・育児時間がともに2割ほど増えている[注2]。さらに、母親のフルタイム就業率が5ポイント上昇した[注3]。父親が家事・育児を担うようになることで、母親も働きやすくなったためだ。平均6週間の短い育休であっても、本人と妻のその後のライフスタイルを変えるようなインパクトがあるのだ。
父親が変われば子どもも変わる。スペインの研究[注4]によると、父親が育休を取ることによって、子どもも伝統的な性別役割分業意識から解放されるようだ。スペインでは07年に育休改革を行った結果、男性の育休取得率がほぼゼロから54%まで急上昇した。

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