上場企業の女性取締役2423人の実像 3823社を調査
ダイバーシティ女性取締役が5人いる企業は1社、4人の企業は9社
1858社のうち女性取締役を最も多く登用している企業はノエビアホールディングスで5人。化粧品メーカーのノエビアや医薬品・健康食品メーカーの常盤薬品工業などを傘下に収める持ち株会社だ。取締役の合計人数は11人で、女性比率は45.5%と高い。なお、5人とも社外取締役で全員弁護士である。
続いて多いのは女性取締役が4人在籍する企業で9社。ソニーグループや三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、大和証券グループ本社など、業種は電気機器、銀行、証券とバラエティーに富む。

女性取締役が4人以上いる上場企業は10社。表は女性取締役の人数が多い順(同数の場合は2021年10月末時点の時価総額順)で並べた
各社の取締役の構成メンバーは多彩だ。ソニーグループは取締役11人(2021年12月時点)のうち4人が女性で、秋山咲恵氏(サキコーポレーション ファウンダー)、ウェンディ・ベッカー氏(英ジャック・ウィルス元CEO)、岡俊子氏(明治大学大学院 グローバル・ビジネス研究科専任教授)、岸上恵子氏(世界自然保護基金ジャパン理事)という顔ぶれ。
一方、MUFGは取締役16人中の4人が女性で、桑原聡子氏(弁護士)、タリサ・ワタナゲス氏(元タイ銀行総裁)、藤井眞理子氏(東京大学名誉教授)、本田桂子氏(米コロンビア大学国際公共政策大学院客員教授)。ソニーグループ、MUFGともに外国人1人を含む全員が社外取締役である。
女性取締役比率75%、最上位は北海道の上場企業
女性取締役の人数で比べると、東証1部(21年12月時点。現在のプライム市場)上場の大手企業が上位を占める。しかし、女性取締役「比率」の上位では、顔ぶれが一変する。
トップは光ハイツ・ヴェラスで女性取締役比率75%。取締役4人のうち3人が女性だ。同社は北海道札幌市に本社を置く、介護付き有料老人ホームを展開する会社である。
次に比率が高いのは50%で9社。マザーズやJASDAQ(現在のグロース市場)といった新興市場上場企業が多い。例えばダブルエーは、日本と中国、香港で展開する婦人靴の製造小売り。あさくまは、「ステーキのあさくま」を東海、関東などで展開する飲食業だ。いずれの企業も取締役の合計人数は4~6人と少なく、取締役の総数(母数)が小さいため、比率が高い。

女性取締役比率が5割以上の企業は新興市場に多い。表は女性取締役比率が高い順(同数の場合は2021年10月末時点の時価総額順)で並べた

『女性活躍サーベイ CGC改訂後、プライム市場を目指す 上場企業の実態と課題分析』(日経xwoman編、写真=鈴木愛子)
企業が取締役会で多様性を実現するには、女性取締役の人数も比率も重要な指針になる。一般に多様性の目安は、女性3人、女性比率30%といわれる。取締役会に女性が3人以上いることで、存在感が増し、女性にとって心理的安全性が高まることで、多様な意見を交わせる場になる。取締役における女性比率は、世界を見回すと米国や欧州では軒並み30~40%が世界標準といえる。プロ野球における打率3割30本塁打が一流打者の証しであるように、ダイバーシティ経営の証しは女性取締役3人、比率30%といってもいいだろう。21年12月時点で3人、30%の条件を満たす上場企業は44社ある。
次回は、女性取締役がいない上場企業に注目したい。
※文中の数値は2021年12月時点のもの
(文 内田久貴=日経xwoman編集部)