変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

「でも、従来の『物差しは一つ』というやり方についてこられる人だけを集めた300人の組織より、それぞれの強みを伸ばしてワクワクしながら働いている、多様性に満ちた3万人の組織のほうが、世の中に対してより大きなインパクトを出せると思うんです」

長川さんの目には、「成長」を最重視する今の就活生や新入社員が少し危うく映ることもある。自身に対する期待が高い分、つまずいた時に自分を全否定しがちだからだ。「才能や努力が足りなかったと自分を責めるのではなく、強みを生かせなかった、弱みのマネジメントがうまくできなかったと捉え、そこから次のステップを考えてほしい。壁にぶつかった時こそ、この本を読み返してもらえればと思います」

挫折したときに助けられたバイブル

『考える技術・書く技術』も、長川さんいわく「壁にぶつかった時に初めて真価を発揮する本」だ。マッキンゼー・アンド・カンパニー初の女性コンサルタント、バーバラ・ミントの著書で原著は1973年に出版。96年の改訂版が日本語訳されている。DTCでは長年、新入社員に配っており、バイブルのような存在だ。

長川さん自身も98年に入社してすぐに受け取ったという。同書が解説する結論→根拠→具体的事例という「ピラミッド構造」の論理展開は、コンサルタントにとって基本中の基本。だが、「実務を経験していない新人にはピンとこなくて当然なんです。実は私も1度挫折してるんですよ」。そう言って、長川さんは自分の本を見せてくれた。確かに前の方のページはあちこちマーカーで線が引かれているが、途中からは真っ白だ。

長川さんはクライアントの前で言葉が出なくなってしまった時期があったが、『考える技術・書く技術』に救われたという

長川さんはクライアントの前で言葉が出なくなってしまった時期があったが、『考える技術・書く技術』に救われたという

しかし、長いキャリアの中でこの本に救われたことが2度あるという。最初は入社して2年がたった頃。なぜ先輩たちのようにうまくプレゼンできないのかと落ち込んだ時に読み直し、初めてピラミッド構造が腹落ちした。さらに入社6、7年目でマネージャーに昇格した頃、外資系企業の社長に英語でプレゼンする機会があったが、そこでこき下ろされてしまい、大きなショックを受けた。

後日、その社長は提案の内容が気に入らなかったために八つ当たりしたのだと分かったが、クライアントを前に話し始めようとすると、うまく言葉が出てこない「イップス」の症状が1、2年続いた。藁(わら)にもすがる思いで、ちまたのプレゼンハウツー本を読みあさったがピンとくるものがない。悩みながら最後にたどり着いたのが手元にあった『考える技術・書く技術』だった。

「もっとシンプルにピラミッド原則に従って論理を組み立てればいいんだと気づいたのです。そこから徐々に症状が良くなり、封印していた英語でのプレゼンに挑戦した時、クライアントから『あなたの話はとてもわかりやすかった』と評価してもらえて、やっと自信を取り戻すことができました。今は『訳がわからない』と思っている新入社員もきっといつかBack to basics(基本に戻れ)でこの本に戻ってくると思います」

苦しい時こそ、強みに目を向け、基本に戻るーー。2冊ともしまい込まずに、いつでも手に取れるところに置いておくのがよさそうだ。

(ライター 石臥薫子)

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0

著者 : トム・ラス
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,980 円(税込み)

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

著者 : バーバラ ミント
出版 : ダイヤモンド社
価格 : 3,080 円(税込み)

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