崎陽軒、あえて横浜密着の理由 まさかのギョーザ投入
崎陽軒(下)
ヒットの原点「横浜密着」が追い風に
横浜市では運動会や卒業式、謝恩会など、いろいろなイベントの際に崎陽軒へ大口の注文が舞い込む。横浜のソウルフード的なポジションを獲得しているから、誰からも文句が出にくいという。雨天に伴うキャンセルでも、原則としてキャンセル料を取らないのは、「地元の食べ物という意識があるから」(野並社長)。雨でも売れる自前の売店を数多く抱えているのも、売れ残りを出さないうえでの強みとなっている。
地元の消費者に食の安全・安心感を深めてもらおうと、工場見学を積極的に受け入れてきたのも、地域密着姿勢の表れだ。主な製造拠点の横浜工場(横浜市)では弁当づくりの手順を体験的に見学できる。新型コロナウイルス禍前には来場者が約3万人に達した。いわゆる「大人の社会科見学」の名所にもなっている。

崎陽軒の野並直文社長
「実際に製造工程を見てもらうと、予想した以上に作り込んでいないことに驚く来場者が多い」と、野並社長は笑う。原材料を見て「本当にこれだけなの?」と尋ねる人も。シューマイに保存料や化学調味料を加えないシンプルな製法を知ってもらえることは、「信頼感につながる」という。飽きがこない、控えめの味付けは、リピーターを呼び込むことにも貢献しているようだ。
食べ飽きない弁当を目指して、「季節性を織り込んだ四季折々の商品を提案している」(野並社長)。例えば、毎年、春には「おべんとう春」を販売しているが、桜が散ると、売れ行きが鈍る傾向があることから、初夏には「おべんとう初夏」を売り出す。「かながわ味わい弁当」「松花堂弁当」にも、旬の食材を盛り込んで、季節感を演出。ハロウィーンに合わせた「ハロウィン限定 黒炒飯弁当」のような、イベントにマッチした弁当も提案している。
駅弁の王者として不動の地位を誇る「シウマイ弁当」は「家庭内での晩ごはん用にも売れている」(野並社長)。仕事帰りに購入する客は珍しくない。シウマイ単品を夕食の「もう1品」として買い求めるケースも多い。
食卓での存在感が大きくなってきたことを背景に、自宅で食べるメニューの選択肢を増やしてきた。たとえば、特大のシューマイをカットすると、中から一口サイズの「昔ながらのシウマイ」が22個も出てくる「おうちでジャンボシウマイ mini」もその一例。もともとは横浜駅東口にあるレストラン複合施設「崎陽軒本店」の人気メニューだ。ウエディングや宴会の際、「ジャンボシウマイ」をカットする演出が催しを盛り上げる。このメニューを家庭でも味わえるミニサイズにアレンジした。