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入り口近くの新刊書や話題書を並べた書棚に面陳列で展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

入り口近くの新刊書や話題書を並べた書棚に面陳列で展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。

今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。ゴールデンウイークは平日のみの営業だったが、年度初めの研修需要の注文も相次ぎ、ビジネス書の売れゆきは順調だったようだ。そんな中、書店員が注目するのは日立製作所の企業改革をトップ自らが自身の言葉で語った経営書だった。

V字回復後にしかけた経営改革とは

その本は東原敏昭『日立の壁』(東洋経済新報社)。著者の東原氏は言わずと知れた日立製作所の会長だ。川村隆・元会長、中西宏明・前会長の後を受けて2014年、社長に就任、16年には最高経営責任者(CEO)となり、ほぼ6年にわたって日立グループのかじ取りを担った。その6年の軌跡を自身の言葉で語ったのが本書だ。副題には〈現場力で「大企業病」に立ち向かい、世界に打って出た改革の記録〉とある。

未曽有の経営危機からV字回復を果たしたのが前任の2人なら、東原氏に課せられたのは営業利益率の高い「稼げる会社」にすることと、コト(サービス)を売る社会イノベーション事業への転換を加速させ、その分野で世界に伍(ご)していける「グローバル企業への成長」を果たすこと。東原氏はCEO就任3年目で目標の営業利益率8%を達成し、後半の3年間で1兆円を超える大型買収などを決断し、世界で戦える企業へ変革する道筋を付ける。

「日立が経営危機に陥った遠因は『大企業病』にあったと思います」。東原氏は序章で率直にこう記す。大企業的体質の側面として「保守的で改革を好まず先延ばしにする事なかれ主義」「失点の少ない人が出世しやすい官僚的体質」「自分が担当する事業部門で赤字を出しても他部門が助けてくれるという甘えの構造」などを挙げ、自らの経営改革は、それらの「壁」をたたき壊す作業だったと振り返る。

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