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出社+リモートの「ハイブリッド型」で最適なバランスを模索

こうした背景から、一時期はフルリモート体制にシフトした企業でも、「リモート」+「出社」のハイブリッド型を導入するケースが増えています。

ただし、リモートワークと出社のバランスは、まだまだ模索中。事業部門や職種によっても最適なバランスは異なるため、各社、確立するにはもうしばらく時間を要するのではないでしょうか。

なお、出社して働ける企業を望んでいる人も、出社に対する経営トップや上司の考え方に対しては敏感です。

冒頭に挙げたイーロン・マスク氏は、Twitterで「出社せず働いているフリをしている」という発言もしたそうです。そのように「性悪説」で捉え、従業員を「監視する」ために出社を求めているような企業は避けられます。

経営陣がコミュニケーションの重要性や価値を理解し、その効果を高めるための場・機会を用意してくれている。そして社員たちもその環境を積極的に利用して、コミュニケーションから学んだり楽しんだりしている――そんな風土を求めているのです。

今の時代、企業にとって「フル出社」を義務付けるのは得策とはいえません。優秀な人材が「リモートワーク可」を条件に企業を選んでいるからです。柔軟性が高い働き方によって生産性を高め、利益をもたらせる人材を獲得するためにも、リモートワーク制度を持っておくことは有効です。

しかし同時に、社員がコミュニケーションを通じて成長したりエンゲージメントが高まったりする場所・機会を設けることも重要といえるでしょう。

ちなみに、私が代表を務める会社での取り組みもお話ししましょう。

私の会社では、今後も当面の間、リモートワークメインの働き方を継続します。私自身が昨年、次男の進学にともなって静岡に移住したからです。会社のオフィスと夫・長男が住むマンションはまだ都内にありますが、普段の生活拠点は静岡なのです。

また、メンバーのほとんどがワーキングマザーであるため、メンバーにとっても仕事と家庭を両立させるにはリモートワーク中心のほうが好都合なのです。

しかし、リモートに移行した当初は、「ちょっとした相談・雑談」がしづらいこと、孤独を感じやすいことに課題を感じていました。

そこで、チャットツールに気軽な雑談スレッドを設けて皆で投稿したり、週1回はオフィスに集まってランチをとりながら雑談する時間を設けたりと、コミュニケーションを絶やさない工夫をしてきました。

さらに、最近導入したツールが、孤独感の解消や相談・雑談の活性化に効果を発揮しています。そのツールとは、音声のみのバーチャルオフィスツール『roundz(ラウンズ)』です。

このツールでは、音声が常時接続されていて、自宅でリモートワーク中でも皆と一緒にオフィスにいる感覚で、気軽に話しかけられます。

もちろん、オンラインミーティング中や話しかけられたくない状況のときにはステータス表示してマイクをオフにし、話しかけられないように設定することも可能です。私の会社ではこのツールの導入でコミュニケーションの活性化につながりました。

これは一例で、最近はリモートワーク環境でのコミュニケーションを促進するツールがいろいろと開発されています。

組織にとって最適な働き方を確立できるまで、リモートワークのデメリットをこうしたツールも活用してカバーしてはいかがでしょうか。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
 morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「マンガでわかる 成功する転職」(池田書店)、「トップコンサルタントが教える 無敵の転職」(新星出版社)ほか、著書多数。

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