変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

要約力 インサイドセールスは、オンラインでの活動であることから、顧客から「短時間・効率的」なコミュニケーションが求められることが多い。そのため、伝える必要のある要素を簡潔に整理し、うまくまとめられる要約力が必要である。

分析力/数字力 インサイドセールスは、フィールドセールスと比べて顧客のデータを参照することが必須である。様々なデータを読み解き、営業活動に反映させる能力が、インサイドセールスとして付加価値を示すうえで重要になってくる。

プロセス分解力 インサイドセールス活躍の肝は、営業活動のプロセス化・分業である。そのため、営業活動を端から端まで大枠でとらえるのではなく、むしろ、その中でどの要素が課題で改善が必要なのか、分解して考え対応する能力が必要である。

ノン/ローコンテキストコミュニケーション力 メールなどを含むオンラインでのコミュニケーションであることから、お互いの理解を確認しつつ、相互の共通価値観・文脈が存在しない前提で、コミュニケーションを取ることが求められる。

鈍感力 最後に、現実問題としてオンラインにおいては対面と比較して攻撃的になりやすい人も一部いることから、言われた言葉は適切に取捨選択して受け流し、精神的に引きずらない能力も必須であろう。 

これら一般にインサイドセールスに求められるスキルに加えて、先に上げたインサイドセールスの型によって、追加で必要なスキルがある。

ABM型のインサイドセールスには、フィールドセールスとかなり近いスキルが必要である。例えば顧客との間の信頼関係構築力や、キーマンを抑える人間観察力である。

一方でカバレッジ型では、よりロジカルかつシビアに案件の状況を判断し、ROI(Return On Investment)の視点を持って効率よく営業活動を行うROI思考力や、複数回繰り返す前提で仕組みをつくる仕組み化力が必要である。

テリトリー型は対応する顧客数によって、これらの中間に位置する。

言うまでもなく、インサイドセールスは営業職の中に位置づけられる。インサイドセールスに限らず、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどの「営業職」に求められる「営業共通スキル」についても補足しておこう。

まずは、商品や業界に対する深い理解力と情報収集能力(商品知識)、そして論理的に物事を整理し伝えることのできるロジカルコミュニケーション力、さらに顧客だけでなく社内と関係を構築し、営業活動に必要な事項を前に推し進めていく人間関係構築力が重要になってくる。

最後にスキルとは異なるが、インサイドセールスとして活躍しやすいマインドセットとしてチームでの活動を重視できること」「コツコツ改善を積み重ねることをいとわないこと」「他のチームメンバーと互いに高め合えること」が挙げられることは押さえておきたい。

知識獲得と業務の中での習得をミックスさせる

以上挙げたこれらのスキルは、優秀なビジネスマンになるためにも広く求められる能力であり、一朝一夕に身につくものではない。そのため、書籍などでの知識獲得だけでなく、実際の業務の中で意識しながら習得していくことが主になるであろう。

ただし、フィールドセールスでも、ルート営業、新規開拓営業、御用聞き営業などで求められるスキルが異なるように、インサイドセールスも型によって求められるスキルが大きく異なる。将来的に身につけたいスキル群によって、自分の勤め先や部署は意識して選ぶ必要がある。

組織の営業DXの担い手としての意識が必要

営業DXでは、これまでブラックボックスであった営業活動の見える化・プロセス化・型化が肝であり、その実現のために重要な役割を果たすのがインサイドセールスである。

その為、どれだけ高いスキルを持ったインサイドセールスが集まっても、組織の中で独立した営業チームとしては存在し得ないし、そういった役割が求められることも実際はほとんどない。

インサイドセールスとしてのスキルを高めることだけでなく、組織の営業DX(特に営業モデルの変革)と定着を自ら主導して担っていくことが、組織全体の変革がうまくいく鍵であり、良いインサイドセールスになる方法であろう。

インサイドセールス先進国である米国から20年以上遅れ、ようやく日本でもインサイドセールスをはじめとした営業DXの動きが起き始めている。

それに伴い、今後インサイドセールスの市場価値はますます高まっていくと考えられる。

ただ、日本のビジネス形式に適した「日本式インサイドセールス」は、まだ多くの企業で試行錯誤しているのが実情である。

インサイドセールスとしてスキルを高めることで、人材としての価値を高め、多様で柔軟な働き方の選択肢を得ることに加え、インサイドセールスとしてこの変革を主導することで、日本での営業DXを加速されることを期待したい。

水嶋玲以仁(みずしま・れいに) グローバルインサイト合同会社代表。 東京都出身。北海道大学経済学部卒。日本メーカーから外資系保険会社に転職し財務部長まで務めた後、デルコンピュータ(当時)に転職しコンシューマー部門のジェネラル・マネージャーとなる。以降、マイクロソフト、グーグルなどでインサイドセールスの実務全般について、20年に及ぶ経験を持つ。著書に『リモート営業入門』(日経文庫)『インサイドセールス 究極の営業術』(ダイヤモンド社)がある。

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