アパレルの未来は「愛」が握る 変革者の熱量をヒントに
『アパレルに未来はある』より
ブックコラム
変革者たちは「アパレル愛」をいかにビジネスに変えたのか――。新型コロナウイルス禍で苦境に立たされているアパレル業界の課題を明らかにしつつ、常識にとらわれないアプローチで異彩を放つ変革者たちの熱量の原点と成功までの軌跡を探り、未来へのヒントを見いだそうとしているのが、本書『アパレルに未来はある』だ。担当編集者が読みどころを紹介する。
「ダメな理由」を挙げるだけでいいのか
米国の老舗百貨店「ニーマン・マーカス」やセレクトショップ「バーニーズ・ニューヨーク」、有名ブランド「ブルックス・ブラザーズ」、ファストファッションの雄「フォーエバー21」、国内では「レナウン」などアパレル業界を代表する企業が倒産したというニュースが次々に流れるなど、アパレル業界が厳しい状況に追い込まれている。
苦境の要因として、本書は大量生産・大量消費を前提に短サイクルで新商品を投下するシステムと、それに起因して加速する過剰な値引き販売などを指摘している。ただ、こういった「ダメな理由」を明らかにする議論は多くの場でなされており、「それだけでいいのか」と、長年ファッションを中心としたジャーナリストとして活動する著者の川島蓉子氏は異を唱える。
そのうえで、前編ではアパレルの未来を左右する"6つの壁"として「サイクル」「セール」「ブランド」「店」「情報」「デザイン」を挙げ、その壁を乗り越えるためのヒントを提示する。例えば、「従来の半年ワンサイクルに縛られず、長きにわたって定番商品を展開したり、1カ月ごとに数点の新商品を投下したりする」「適正量を正価で売り切るために知恵を絞る」「ブランドが持っている志を伝える」「リアル店舗をブランドコミュニティーの場と考える」といった具合だ。
しかし、こういった変革を、生産から販売までのプロセスに多くの企業が関わっているアパレル業界で行うのは容易ではない。そこで、後編では独自のアプローチでファッションビジネスに挑戦している変革者たちの軌跡を紹介している。