やりたいことがない学生へサイバーが推すキャリアの本
社会人1年目の課題図書「当社の『21世紀を代表する会社を創る』というビジョンは非常に抽象的です。その分、社員は自分なりに意味を咀嚼(そしゃく)する必要があります。一人ひとりがその過程で自分の強みは一体何なのか、それをどう生かしていくのかを考え、自分の進みたい方向性を決めていく。会社も社員それぞれの強みに目を向け、そこからミッションや事業を創造し伸ばしていくのが当社の経営スタイルです。この本も一貫して、強みを生かしてキャリアを構築していくという視点で書かれているので、そこが腹落ちするのではと思います」
就活生にとっては、自己分析で強みを把握するのはもはや当たり前。その強みとやりたいことを結びつけて自己PRをするのが内定を勝ち取る王道とされる。だが多くの学生は「そもそも、やりたいことがわからない」と悩む。そして、とりあえずいくつかの強みの中から、企業に評価されそうなものを選んで自己PRに励む。そんな学生に寺脇さんも数多く出会ってきた。

多くの学生と話してきた寺脇さんは「やりたいことがないと悩む人が多い」と語る。
「『正解』を探したくなる気持ちはわかります。でも、そもそも強みに『正解』も『不正解』もない。やりたいことについても、あるに越したことはありませんが、なくてもいいのです。でも何か探さなければという焦りから、これまでの人生を一から振り返って漠然と強みややりたいことを探そうとしがちです。そうするとますますわからなくなって『とりあえず自分探しの旅に出ます』みたいな話になっちゃう。それをこの本は、目的は仮のものでも構わないとか、やりたい『こと』でなくても、どんな『状態』であれば自分は幸せや喜びを感じるのか、から発想しようという風に、考える順番やフレームワークを提示してくれている。そこがいいですね」
寺脇さんが特に「これだ」と膝を打ったのは『20年も生きてきたのなら、君の強みは必ず好きなことの中にある』という一文だ。
「『必ずある』と断言されると勇気が出ますよね。無理して作らなくてもあるのだと。僕自身は強みは見つけるものではなく、『自分はこれで行こう』と決めるものだと思います。本当は決める過程でたくさんの大人と対話し、考えを深めていければよいのですが、そういう伴走してくれる大人に出会うのはなかなか難しい。だからこそ、整理の仕方や考え方を具体的に書いてくれているこの本が役に立つと思います」
強みだと思っていたことが、強みじゃないと判明したときは…
一方、就活の時点では強みを見つけたつもりになっていたのに、働き始めた途端にそれを見失ってしまう人も多いと寺脇さんは感じている。
「当社では入社前に内定者をアルバイトとして受け入れて実際の仕事を任せたり、新入社員に大きな裁量権を渡してチャレンジしてもらったりするケースが多いのですが、中には『自分では強みだと思っていたのに、この程度じゃだめだとわかり、がく然とした』と自信を喪失してしまう人もいます。しかし、1年目から失敗せずに、全て完璧にこなせる人はほとんどいません。彼らに僕はいつもこう伝えています。『強みは相対的なものではないので、人と比べて落ち込む必要はない。会社はあなたの強みがわかって採用しているのだから、心配しなくても大丈夫。ただ、強みは見つけたらおしまいじゃない。これだと決めたら信じて磨こうよ』と」