慶応サークル仲間の縁も支え 27歳で起業したVB投資家
佐俣アンリ・ANRI代表パートナー(下)
リーダーの母校独立したのが2012年でその前の年に僕、就活している頃に知り合った妻(佐俣奈緒子氏。キャッシュレス決済のhey創業者)と結婚したんですが、当初は家賃も全然払えなくて、(決済サービス大手の)ペイパルに勤めていた奥さんに2年くらい食わせてもらっていました。その頃から一緒にいてくれてますから、こちらも感謝です。今は1歳、2歳、7歳の3人の子どもにも恵まれて、毎日てんやわんやしながら楽しくやっています。
現在はVCの仕事と並行して、個人でソーシャルセクターの活動を支援。その一環でNPO法人ETICと連携し、次世代のイノベーターを育成する「MAKERS UNIVERSITY」の運営にも参加する。
「自分がやりたいことが見えてきたので学校をやめて起業したいけど、親から反対されている」「親のことは嫌いじゃないのに、理解してもらえなくて悲しい」。MAKERS UNIVERSITYに参加している高校生、大学生からそんな声を聞きます。でも僕は思うんです。若い子たちが直観的に感じていることは、絶対に正しい。言語化できていないのは、時代が追いついていないから。正確に表現するためのワードがまだ存在していないから親を説得するのが難しいだけなんだと。
今の20代半ばまでの子たちは、本当に優秀だと感じます。コミュニケーション能力も高いし、気候変動や貧困など社会的な課題への感度が高くて、話すことも論理的。彼らは一歩先を行っているので、30代の僕ら世代でさえ、置いていかれそうな感じがします。だから40代、50代の親がついていけないのは当然だし、心配する気持ちも十分わかるのですが、子どもたちの言っている「そんなことあるわけないだろう」ということに対して、大人はなるべく同意してあげてほしい。彼らこそが新しい時代を創っていく人たちなので、僕は心底応援したいと思っています。
僕は自分の子どもたちには、生まれた時から「お金は稼げなくていい。月を見て泣くような詩人にでもなってほしい」と思っています。これからの時代、「詩人」に匹敵する職業って何かと考えると……ラッパーとかダンサーですかね。ちょうど息子が(K-POPアーティストの)BTSのヒット曲「ダイナマイト」を踊りたいと言い出したので、いいぞいいぞと。
僕たち夫婦は2人とも経営者だから、放っておくと子供たちも経営者になってしまうと思いますが、自分たちは親からフラットに夢を決める自由をもらったので、子供たちもできるだけフラットに自分で意思決定してほしい。そのためには、いろんな道があることを知ってほしいし、子ども自身がやりたいことが見つかったら、それがどんなに理解不能であろうと全力で応援しようと思っています。
(ライター 石臥薫子)