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経験学習では学びに足りない時代

日本のビジネス社会における人材育成では、長らくOJTが重視されてきました。On The Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略であり、実務の中で先輩が後輩に対して指導しながら業務を覚える育成手法です。

OJTについて「投げっぱなしであり、育成ではない」とやゆする人もいますが、その本質は「経験学習サイクル」にあります。実務そのものを事例として、まずはやってみて習得し、繰り返しの中で習熟し、やがて独り立ちしていくサイクルこそがOJTの本質です。

また、先輩が後輩を教えるという構造において、年次関係を強化する効果もありました。先輩と後輩との間に師弟関係にも近い間柄ができることで、年功色が強かった日本企業での社内序列を維持することにも一役を買っていました。

高度成長期からバブル期にかけ、OJTが人材育成の中心にあり、効果を発揮してきたことは事実です。

ただ、そうしてOJTだけで育成されてきた人材は、変化に極端に弱いことがわかってきました。本来人は何歳でも学び変われるはずなのですが、経験学習だけで育ってきた人は、「経験していない」ことに対してどうすればよいかわからなくなるからです。

バブル崩壊後、やったことがないからどうすればよいかわからない上司たちと、既に機能していないOJTの中でほぼ育てられなかった部下との関係性が、失われた30年間を生み出してきた一因なのかもしれません。最近40代、50代以上の早期退職が増えている背景には、過去の経験学習だけで育ってきた人材の淘汰という側面もあると聞きます。

かつてはやゆされていたOff-JT

経験学習としてのOJTに対し、実務以外の場面で行う教育をOff-the-Job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)、略称Off-JTといいます。座学を中心とした育成手法ですが、経営幹部による薫陶という名の精神論の伝授が多かったのは昔話で、最近では理論的背景に基づいた知識の習得、そして実際の組織課題解決を通じてチームで学習するアクションラーニング手法などを用いた疑似経験学習なども取り入れられています。

このOff-JTの仕組みが、まさにこれから子どもたちに対して実践されようとしている、新しい学習指導要領の内容と似通ってきているのです。

その理由、理論や知識を学び、その先に生きる力そのものを高めていくというゴールの一致が見られるからです。

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