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社内横断プロジェクトの新メンバーの過半数を、初めて女性に

Aさん 実は、私がメンバーを決める社内横断のプロジェクトチームがあって、そこに新しく入るメンバー5人のうちの3人が女性社員なんです。うち2人はママ社員です。これまではほとんど男性ばかりが選ばれていました。女性が過半数を占めるのは初めてです。こうした状況で、男性として彼女たちにどう接していけばいいのか。その点、アドバイスをいただけたらうれしいです。

小早川さん 女性が史上最多になるということで、そのプロジェクトは社内で注目を集めると思います。これは男女関係ないのですが、注目されているときはそのプロジェクトはうまくいかないことがあります。もし今回のプロジェクトがうまくいかなかったとき、「女性が3人いたから」「育休明けの人がいたから」などと理由付けしたくなる人が出るはずです。そのとき、その分析は間違っているということを、一番不安を持っているであろう女性の新メンバーたちに伝えてあげるべきでしょう。

チーム内でも「この構成は初めてだから最初からうまくいく可能性は低い。失敗するのが当たり前。だけど、頑張っていこう」と話して、サポートしていくべきだと思います。

Aさん 目玉として押し出しつつも、周りからの期待値を下げるような動きが必要なんですね。

小早川さん そうです。やはり3回ぐらい繰り返さなければ、新しい体制はうまくいかないと思います。

Aさん 確かに今回の構成は実験的です。しかし、足元を見れば、今の弊社の新入社員の男女比は大体半々です。とすると、今後は将来的には社内横断のチームを作る際にも、男女比が同じぐらいになる時代が来るのだろう、と。

そうした将来を見越して今回は女性を多めに入れてみました。でも、私はメンバーを選ぶだけで、チームをうまく回せるかは不安もあります。小さい子どもを育てながらのメンバーとは、飲みニケーションもなかなかできないでしょうし。

小早川さん できれば女性メンバーへのサポートは継続してください。さらには、もしうまくいかなかったとしても、次回も同じような構成にして、女性を2人は入れるとか、LGBTQを公言している方がいればその方も入れるなどといった工夫を続けてください。

日本の社会は何かをきっかけに大変革を遂げることがある

Aさん 今日は具体的なアドバイスをいただき、本当にありがとうございました。

小早川さん ネガティブなコメントが多かったかもしれませんが、日本に希望があるとすれば、みずほフィナンシャルグループ(FG)新社長就任のニュースです。これまでの既定路線とは違った路線で新社長が就任したと聞いています。日本では、みずほFGのような堅い組織で、あのような人事が実現することはなかなかありません。

また、日立製作所も新しいジョブ型人事制度を導入しましたよね。そういう企業から新しいプロ経営者が輩出されるようになるかもしれません。

日本の社会は、それまで何をしても変わらなかったのに、何かをきっかけに急にグッと変わるときがあります。禁煙文化の話を出しましたが(前回記事「パワハラ指摘恐れて仕事抱え込み 現場リーダーの悩み」)、今は東京の街中でたばこを吸う人は、米国ニューヨークより少ないのではないかと思うくらいです。日本では、ときどきこうした「不思議現象」が起きます。なので、将来、日本社会がいきなり経営学を重視しはじめたときに乗り遅れないように、今から着々と準備しておく必要があると思っています。

(構成 小田舞子=日経xwoman)

[日経xwoman 2022年3月16日付の掲載記事を基に再構成]

小早川優子
ワークシフト研究所 代表取締役/慶応義塾大学大学院経営管理研究科修了。経営学修士/米国コロンビアビジネススクール留学。2012年に独立。ダイバーシティ・マネジメントやリーダーシップ開発、交渉術のコンサルタント、セミナー講師として東証一部上場企業からベンチャー企業、官公庁、地方自治体まで年間100回以上登壇し、5年連続満足度99%のビジネスプログラムを提供。主催する「育休プチMBA」には延べ1万人のママが参加。

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