変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

例えば、「年俸ばかり上がって会社への貢献度合いが少ない50代以上の社員をなんとかするための『リスキリング』」なのか、「我が社は斜陽なのだから、第2の柱になる事業を作り出しにいく。そのために社員を『リスキリング』する」なのか。ちゃんとカタカナに頼らずに説明できなければ、社員が動くわけがないですよね。

カタカナや外来語って本当に危険です。DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代だとか、DXが大事だとか言われますけど、そもそも今の時代、デジタルを使わずに事業を作れるんですか? そもそも新しいことをするって、それこそ江戸時代までさかのぼったとしてもトランスフォーメーションですよね。

ですので、カタカナでリスキリング、リスキリングと言って分かった気になって満足していちゃダメなんですよ、特に経営者や社員教育を担当する人事の人は。

リスキリングは読み書きそろばんの置き換えではない

スキルっていう言葉から想起されるのは、読み書きそろばんとかですよね。どうも、そこのところから方向性がずれてしまっているように思えてなりません。読み書きそろばんを、エクセルで効率化しましょうとか、AIで置き換えましょうという話をしても……。そうではなくて、ビジネスパーソンとしてのあり方そのものを変えなきゃダメだと思うんですよ。

だって、少し考えたらわかりますよね。ちょっと何かの講座で勉強した程度で身につくことって、すぐに市場価値が値崩れしますよ。本当のリスキリングは時間がかかるということです。深い、本質的なことを逃げずに考えないといけないので。

ただし、その「深くて本質的」なリスキリングに、すべての人がトライする必要はないとも思っています。だって、すべての人が、組織人から経営者になる必要はないですよね? 全員が、リーダーになってリーダーシップを発揮しなければいけない、なんてことはないはずです。

誰か頑張っているリーダーがいて、その人が成し得たいことを一心に支えるフォロワーシップだって、欠かせない大事な経営パワーです。もし、自分の中にある「モノサシ」がフォローワーシップを発揮することにあるなら、「何かをとにかく勉強し直す」ではなく、「フォロワーシップを発揮するために必要なことを身につける」となるわけです。目的と手段、逆転させることなく、新しい一歩を踏み出してください。

(聞き手・構成 桜井陽)

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