「どのスキルが必要か」は戦略的判断 定石はずす手も
ビジネススキル強化メソッド (3)
ビジネススキル強化メソッド時には難行苦行を続ける覚悟も
ところが、必要性からアプローチすると、自分に適性のないスキルに苦労させられる場合が出てきます。たとえば、数学が不得意な人がデータ分析のスキルを身につけるのは大変です。人づきあいが苦手な人がチームビルディングのスキルを習得するのもハードルが高いです。
仕事で必要なら仕方ありませんが、時には難行苦行を続ける覚悟が要ります。その間のモチベーションを維持するのが簡単ではありません。
くわえて、今すぐに必要なことばかり考えていると、自分を見失ってしまう恐れがあります。すぐに役立つことは案外陳腐化しやすく、次から次へと自転車操業に陥る危険性もあります。

あえて定石をはずす手もある
さらに、どの仕事に何のスキルが必要かは一慨には言えません。今さらこんなことを言うと怒られるのですが、事例をひとつ紹介しましょう。
〈事例〉 広告デザインの会社を起業したCさん。デザイン力を売りにしようと優秀なデザイナーをあちこちから引き抜き、意気揚々と会社を立ち上げました。
ところが、デザイナーたちは腕前に自信を持つあまり、顧客に分かるように説明をしません。それどころか、顧客の意見に「素人のくせに」と耳を貸そうともせず、挙げ句の果てに仲間内で喧嘩ばかりして、仕事が前に進みません。
経営の危機を感じたCさんは、なんと優秀なデザイナーをみんなクビにしました。その代わりに、たとえ腕前はイマイチでも、顧客としっかりとコミュニケーションが取れるデザイナーを新たに採用しました。すると、それが業界で評判になり、注文がどんどん入るようになったそうです。
ところが、デザイナーたちは腕前に自信を持つあまり、顧客に分かるように説明をしません。それどころか、顧客の意見に「素人のくせに」と耳を貸そうともせず、挙げ句の果てに仲間内で喧嘩ばかりして、仕事が前に進みません。
経営の危機を感じたCさんは、なんと優秀なデザイナーをみんなクビにしました。その代わりに、たとえ腕前はイマイチでも、顧客としっかりとコミュニケーションが取れるデザイナーを新たに採用しました。すると、それが業界で評判になり、注文がどんどん入るようになったそうです。
つまり、どのスキルを必要と考えるかは、極めて戦略的な判断になる、という話です。一般論で考えるのが無難ですが、価値のある人材になるために、あえて定石をはずすという判断もあります。そのことを頭の片隅に置いておきましょう。
堀公俊
組織コンサルタント。日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ビジネススキル図鑑」「ビジュアル ビジネス・フレームワーク[第2版]」など。
組織コンサルタント。日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ビジネススキル図鑑」「ビジュアル ビジネス・フレームワーク[第2版]」など。