ウクライナ戦争から考える 日本を取り巻く世界の現実
紀伊国屋書店大手町ビル店
ビジネス書・今週の平台決定的な影響を及ぼすのは「戦場の内部」
その上で、「戦争全体の趨勢に大きな影響を及ぼしたのは、侵略に対するウクライナ国民の抗戦意志、兵力の動員能力、火力の多寡といった、より古典的な要素であった」と述べ、「この戦争が最終的にどのような形で終結するにせよ、そこに決定的な影響を及ぼすのは『戦場の内部』――歴史上多くの戦争の勝敗を分けてきた、暴力闘争の場になるのではないだろうか」との見通しを示す。
まさに戦争の帰趨(きすう)は戦場で決まるのである。加えて大国の行動は核抑止に強く縛られていることも明らかになった。この見通しのもと、「我が国がそのような事態に巻き込まれたらどうすべきか、そうならないために何をしておくべきかは今から真剣に検討しておく必要がある」と問題提起する。
「ウクライナ戦争に関してはこれまでもいろいろな本が出たが、開戦1年が近づいたタイミングでコンパクトながら真正面から扱ったこの本が出た。そこにビジネス街の読者も大きく反応したようだ」と店長の桐生稔也さんは話す。
中国や世界インフレにも関心
それでは先週のランキングを見ていこう。今回は新書のランキングを取り上げる。
1位は今回紹介した『ウクライナ戦争』だ。年末にもよく売れたという。2位の『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』は習近平が3期目を狙った真の狙いや最近の中国の国家戦略、権力構造を解説した一冊。著者は中国問題グローバル研究所所長だ。3位の『未来の年表 業界大変化』は人口減少対策総合研究所理事長を務める作家・ジャーナリストが人口減少でこれから起こることを描きつつ、「戦略的に縮む」方策を提示する。
4位の『世界インフレと戦争』はインフレの歴史と構造を論じ、あるべき経済政策を考察した経済産業省出身で英大学の博士号も持つ評論家の論考だ。5位の『指導者の不条理』は失敗する日本の組織に起こりがちな不条理を研究した組織論。著者はダイナミック・ケイパビリティ論などを専門とする経営学者だ。不穏な世界情勢への関心の高まりが感じられるランキングになった。
(水柿武志)