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インプット増やすには視野を広げる

まず「観察」についてです。「観察」の次には「判断」がきますが、判断には「判断するための材料」が必要です。そこで大事になるのが、材料を仕入れるために観察することです。ためしに、自分自身をいろいろな価値基準が詰まった「関数」だとイメージしてみてください。入ってきた情報を「処理して、判断して、計算結果をアウトプット」することで、「やるやらない」「好き嫌い」などを決めています。つまり、インプット=観察がないと計算ができないので、まずはインプットが大事だということになります。

良いインプットを増やすには、視野を広げてたくさんの情報に触れることです。ただ、集めた情報を自分の中に吸収できなければ、情報をたくさん集めても意味がありません。そこで、「入力情報=アクセス情報量×吸収率」と考えて、同時に吸収率も上げることを考える必要があります。この話を、アオアシに出てくる実際のシーンで考えてみます。

主人公の葦人と同じく高校1年生の冨樫は、サッカーの基本を知らない葦人よりも自分のほうが格上だと思っています。ところが、葦人のほうが先に選抜組であるAチームで試合デビューしてしまいます。モヤモヤしている冨樫に、チームのオーナーの娘の杏里は「あなたは青井選手から何かを学ぼうとしたことはあるんですか?」というひと言を投げかけます。さらに冨樫は、監督からも「お前が今一番Bに近いぞ」と言われてしまいます。監督は冨樫に「信頼できる意見を求めて人にきけ。きいて修正。この繰り返しだぜ。」と言います。これがまさに「観察→判断→実行」のループということなのです。

冨樫は葦人に「ちょっとサッカーを教えてくれ」と意を決した様子で言います。その後、一緒に試合のVTRを見ながら、葦人が試合中どの範囲のものが見えていたかを説明すると、超人的な視野の広さをもつ葦人の説明に、冨樫は「そんなとこまで見えてんのかよ」と驚きます。「葦人から学ぶことなどない」「自分のほうがサッカーが上手い」という思い込みが冨樫にはありました。思考がガチガチに固まって「心理的に柔軟でない状態」になっていた冨樫が、杏里や監督の言葉で凝り固まっていた価値観が揺さぶられ、「心理的柔軟性」を手に入れたシーンです。冨樫の思考はここでアップデートされたのです。

次は「判断」についてです。「判断」は分解すると「価値基準×入力情報」になります。入力された情報を解釈し、思いついたいくつかの選択肢の中から、どれが一番いいかを評価をして選択をすることが「判断をする」ということです。ここで大事なのが「1.1力」です。

ノーマルな状態を「1.0」、少しご機嫌・ポジティブ・やる気がある状態を「1.1」、少し不機嫌・ネガティブ・やる気がない状態を「0.9」と表現します。「1.1」と「0.9」の人が一緒に仕事をすると、掛け算になるので「0.99」になり、「1.0」の状態よりも悪くなってしまいます。「1.0」以下の状態で判断をすると、良い結果にはならないものです。逆に、どんどんドツボにハマるようなことも起こります。ですから、判断は「1.1」の状態ですることが重要です。入力された情報を常に「1.1」で解釈し判断する価値基準をもつことが大切なのです。

アオアシには、チームが1対5で大敗した後、ロッカールームで3年生が1年生を怒鳴りつけるシーンが出てきます。こんな負け方をしたことは今まで一度もないと言って先輩は怒るのですが、ずっと目標達成してきた部署のマネージャーが突然未達になって怒るようなことは、ビジネスの現場でも割と「あるある」なシチュエーションではないでしょうか。

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