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何をどれだけ学べば、どんないいことがあるか

内山 藤井さん、今のお話を聞いてどのような感想をお持ちですか。

藤井 いよいよ日本におけるリスキリングを起点とした様々な政策が本格的に動いていくなということで、非常に楽しみです。何をどれだけ学べば、どんないいことがあるのか。こうした学びの価値基準を、個人と企業の関係性だけではなくて、社会全体にどれだけ実装できるか、というところが、今の総理のお話を聞いて政策実行に向けては大事なポイントになるのかなというふうに感じました。

日経リスキリングサミットのクロージング座談会

日経リスキリングサミットのクロージング座談会

内山 続いて原さん、いかがでしょうか。

 総理の熱意をひしひしと感じました。こういった形で日本の働く人々が自ら戦える力をつけていくという形にマインドセットが変わっていけば、社会全体にとっても大きな話だと思います。また、企業の側からすると、社員を囲い込むことで、自らの意思で自らのキャリアを考えていく力を結果的に奪ってしまったという反省があります。そういう意味で、このような形で人々の意識が変わることで経済も動き出すのではないでしょうか。

内山 もう1つ、社員がリスキリングをして外に飛び出してしまうのではないかという問題についてはいかがですか。

 2つありまして、1つはある程度外に出て行ってしまうのはやむを得ない。そのかわりに、しっかりとそれ以上に優秀な人をひき付けられる企業になることが大事です。もう1つは、例えば社員にスキルアップのためのメニューを提供することは大変よいことなのですが、漫然とやるだけですと、意識の高い人だけがそのメニューを活用して、そしてスキルをつけて出て行ってしまう。

そうではなく、先ほど申し上げましたように、このスキルをつければ、この会社の中でどんないい仕事があるんだ、こんな良いポジションがあるんだということをしっかりセットで示す。そうすることで、社員に前向きな気持ちがわくように、会社としてはしっかり情報を整理して社員に提供するこれが一番重要だと思ってます。

内山 では、後藤さんのご意見を伺いましょう。

技術的失業にリスキリング手当を

後藤 リスキリングがなぜ海外で注目されたのか。一番の理由はAI(人工知能)やロボットテクノロジーが進むことによって人間の労働が自動化され、仕事がなくなる技術的失業の問題です。それを防ぐためにリスキリングが注目されました。これから日本でテクノロジーが進むことによって仕事を失う可能性のある方々へのリスキリング手当をお願いしたいです。また、給与をもらいながら、リスキリングを進めていく有償のインターンシップのような制度が、英国などでは盛んに取り入れられています。ぜひ、こうした制度の導入も検討もいただけたら幸いです。

内山 論点が尽きませんが、残念ながら時間が迫っております。総理、最後に一言お願いします。

岸田 「新しい資本主義」という経済モデルを考える中で、人への投資が重要である、よってリスキリングという発想も重要であるということを訴えてきた身からすれば、大変うれしく思います。リスキリングを進めるにあたって、政府としても様々な環境整備をしなければなりません。民間においても、年功賃金から日本にあった形の職務給への移行など、企業文化も変わっていかなければならない。官民それぞれ努力することによって、社会全体、経済全体を変わっていくということなんだと思います。そのためにも、大きな方向性はこっちだということをしっかりその確認しながら、官民で協力をしていく努力が大事だと思っています。

内山 ありがとうございました。官民連携でのリスキリング、これは一朝一夕にはできないと思います。リスキリング関係者の継続的な取り組みが必要です。来年もぜひ、サミットをやりましょう。本日はありがとうございました。

(桜井陽)

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