獣身と人心養う慶応幼稚舎 ロッテ玉塚氏の小学校時代
玉塚元一・ロッテホールディングス社長(上)
リーダーの母校福沢イズムは慶応の中でも幼稚舎が一番濃く、6年間同じクラスだとクラスメート同士、親しい間柄になるという。

「幼稚舎には入ったものの、自分は周囲の他の子どもたちとは違って家業がない。だから、自分で切り開いていかないとダメだ。そんな思いを胸に秘めていた」と振り返る
6年間、同じクラスだと、自然とみんなきょうだいのような関係になっていきます。僕らの同期には今、経営者になっている人も多い。医者も数えたことはないけれど、20人くらいはいるんじゃないですかね。頑張っているやつが多く、たまにみんなと会いますよ。
幕末の世に生きながら、福沢先生は世界にいち早く目を向け、見聞を広げてこられた。「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」や「独立自尊」といった言葉の根底には、今でいう「多様性」、つまりどこで生まれ、どういう人種で、どんな嗜好性を持っていようが、みな平等で自由で、それぞれに対しリスペクト(尊敬)すべきである。また、それぞれが持つ良さやスキルを自分なりに学びとりながら、スケールの大きな人間に成長せよ、とその重要性を説いているのだと思います。その教えは本質的に正しく、今日の混沌とした現代社会にあっても、何ら色あせるものではありません。
慶応義塾の中には福沢先生の教えが綿々と流れてはおりますが、中学、高校、大学となるにつれ、薄れがちな側面があるのも否めません。福沢先生の教えが一番濃いのが幼稚舎で、それは今も変わることはないと思っています。福沢先生の命日(2月3日)には、クラスみんなでお墓参りしたのも覚えています。
福沢イズムの継承の仕方は幼稚舎の各先生に任されており、伝え方は千差万別です。ただ、福沢先生への絶大なるリスペクトは共通しています。先生方はそれぞれ創意工夫を凝らし、子どもたちと真剣に向き合い、叱るときは叱る。そうやって僕らを成長させようとしてくれたと思います。