インフレ・円安どう対処? 日本を浮上させる戦略は
マネックスグループ社長 松本大氏(15)
ビジネスの視点しかも今回のインフレは、一過性ではなさそうだという点も重要です。年初のこのコーナーでも触れたように、もともとESG(環境・社会・企業統治)重視の流れで世界的にエネルギー価格や人件費には上昇圧力がかかっていました。さらに穀物価格や輸送費の値上がりで肥料価格も上昇し、農作物の値段も上がってきている。そこに新型コロナウイルス禍による需給のアンバランス、ロシアによるウクライナ軍事侵攻、円安……とまるで日本は波状攻撃を受けているような状況ですから、中長期的な視点に立ってどう対処すべきかを考えておいた方がよいと思います。
円預金は円安にも弱い
個人にとって一番深刻なのは、円預金がインフレにも円安にもめちゃくちゃ弱いことです。円のままで持っていると価値がどんどん目減りしますから、防衛策としては一部を株式やドルなどの外貨、不動産などインフレに強い資産に振り向けるのが賢明でしょう。
投資については長年「余裕資金でやりましょう」と言われてきました。今のようになかなか賃金が上がらない中では「投資なんて無理。それより貯金」と考える人も少なくないかもしれません。でも私は、賃金が上がらないからこそインフレ対応をしないとまずいのではないかと思います。「賃金が上がらないから投資に回せない」と嘆いていても貯金は目減りする一方。賃金が上がらないからこそ、投資で増やすしかなくなっているとも言えます。
例えばこの20年間、なけなしの賃金の一部、例えば2万円を毎月せっせと米国のS&P500に連動するインデックスファンドなどに積立投資していれば、1300万円ぐらいになっていたはずです。自分は日本国内で働いていて、あまり賃金は増えなかったけれど、自分の分身をアメリカの企業で働きに行かせていたら、いつのまにか資産が増えていたというイメージです。
特にこれからの若い人は、日本と海外で「デュアルライフ」を送るようなつもりで海外に投資することを考えてみてもよいと思います。もちろん株式投資は短期的には大きく下がることもあります。ですが、若い人は時間を味方につけることができますから、時間と投資対象の両方を分散化すれば、インフレ環境下で資産を増やせる可能性が高い。
逆に高齢の方には投資はあまりおすすめしません。預金がたくさんあるのなら、生前贈与などでどんどん子や孫にあげた方がいいでしょう。インフレは、預金をいっぱい持っている人に税金がかかるようなものです。マクロ的に見れば、持てる高齢者から持たざる若者に富が移転されるプロセスとも言える。そう考えるとやっぱり若い人は積極的に投資した方がいいでしょうね。
では株式を買う場合、投資対象はどこの国がいいのか。さきほどS&P500を例に挙げましたが、アメリカがその筆頭であることは間違いありません。ただ私は、日本の株式もぜひ買ってほしいと思います。というのも、日本の株価が低いままでは、日本の国力も一層衰えてしまうからです。