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2021年9月には北野高校1年生320人を相手に、卒業以来初のトークセッションに臨んだ。オンラインでの開催だったが、生徒からの質問一つひとつに丁寧に答えた。

リーダーシップについての講演も数多くこなす

リーダーシップについての講演も数多くこなす

北野時代の思い出から、勉強と部活の両立法、つらいときに頑張るためにはどうすればいいか、失敗からの立ち直り方、リーダーとして大切にしていることなどいろいろなことを聞かれました。みんなすごくいい質問をしてくれてうれしかったですね。その中で「勉強をする目的がいまいちわからない。因数分解ができても、走るのが速くなるわけじゃないし、方程式が解けたところで本当に社会で役に立つのかと考えてしまう」という生徒がいました。確かにそう感じている中高生は多いと思います。

僕はそれに対して、例えばスポーツをしていて体力を上げる方法を考える時、心肺機能を強化する、筋力をつける、走り方を変えるなどいくつもの要素に分けるのも、因数分解と似ているという話をしました。いろんなことが絡み合った複雑な世の中を1回分解して整理する考え方の一つが因数分解。物事の本質を理解するには抽象化と具体化を行ったり来たりすることが必要で、数学の勉強は問題に対する距離感を変えながら頭を働かせる訓練になります。そういうふうに世の中との接点が見つかると勉強って面白くなると思うんです。毎日、目の前の単元や課題をこなすのに精いっぱいという生徒が多いと思いますが、数学を通して自分たちは一体何を学んでいるのかを学校の先生とも話すなどして、生きていく上で大事なこととのつながりが見えるといいんじゃないでしょうか。

努力を継続するためにはどうすればいいか、という質問も多くもらいました。僕の答えは2つあります。1つ目は自分はどうありたいかという目的を持つことです。目標と目的はよく似た言葉ですが、目標とは○○の試合に勝ちたいとか、日本代表になりたいとか、○○大学に受かりたいなど具体的なものです。それに対して目的とは、なぜ受かりたいのか、日本代表になれるとしたらどんな代表でありたいのかなど、もう少し抽象的な未来の理想状態のことです。僕はそこがすごく大事だと思うし、その部分が腹に落ちていたら努力し続けられるという話をしました。

今だと、コロナ禍でいろんな部活が制限されて思うようにできないと思いますが、こんな自分になりたいというのがあったら、練習以外の他の方法で近づく方法を考えてみようとかマインドを切り替えられるんじゃないかな。

2つ目は努力の捉え方です。努力することは大変だけど、苦しいのは皆一緒。でももしそこで頑張れたらちょっと前に行けるチャンス。努力をそういう風に捉えると、しんどい時こそ頑張れるマインドになれる――。そんなことも話しました。

ラグビーは走りながらパスをキャッチし、後ろにパスを回す「キャッチ・アンド・パス」が基本です。僕は北野高校の同級生や先輩、先生たちからいろんなものをもらったからこそ、その後20年間ラグビー選手としてやってこられたし、今の僕があるので、僕も自分なりに経験を咀嚼(そしゃく)して後輩たちにパスしたい。そんな思いで話をしました。

後半では慶応大学、東芝、日本代表のキャプテンを経験する中で学んだリーダーシップや、現在取り組み始めているビジネスについてお話しします。

(ライター 石臥薫子)

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