40、50代社員のリスキリングに副業活用 企業が積極姿勢に転じた理由
40代からのリスキリング道場
NIKKEIリスキリング読者の皆さん、こんにちは。45歳からの実践型キャリア複業スクール「ライフシフトラボ」の都築辰弥と申します。
本連載「40代からのリスキリング道場」は、40、50代ビジネスパーソンに向けた、脱・学びっぱなしのためのリスキリング実践マニュアルです。今回で5回目を迎えます。また、これまでお読みいただいた方にぴったりのウェビナーをNIKKEIリスキリング主催で実施しますので、リンク先の記事から是非お申し込みください。
さて、2回目から連続で、40、50代のベテラン社員のリスキリングに、ひいては自律的なキャリア形成に、副業ならぬ "複業" がおすすめであることをお伝えしてきました。
今回は少し視点を変えて、企業側がどのように対応しているのか、動きを追ってみましょう。当社が運営する45歳からの実践型キャリア複業スクール「ライフシフトラボ」は、複数の大手企業にも導入いただいており、人事担当者の間で副業やリスキリングへの関心が高まっていることを日々感じています。企業は今、どんな課題認識を持ち、どんな取り組みを行っているのでしょうか。
皆さんの今後のリスキリング活動に役立つ最新情報のほか、企業の人事担当者にも参考にしていただける内容を盛り込みました。今回も、毎月恒例の「やってみよう!」コーナーを用意していますので、ぜひ取り組んでみてください。
40、50代の社内ボリューム層のリスキリングが必須
リスキリングという言葉が世に広がり、政府も大きな予算を組んでこれを推進し始めて以来、企業がリスキリングを行う従業員の対象は、20、30代が中心でした。企業としては、せっかくリスキリングにお金をかけるなら、プログラミングやAI技術といったデジタルスキルをより早く習得できるであろう人材、投資した分より長く会社に還元してくれるであろう人材を選びたいもの。結果的に、どうしても若手社員にスポットライトが当たりがちです。
しかし、従業員のリスキリングによって社会の変化に対応できる企業になるには、20、30代の社員よりもむしろ、社内での人数のボリュームが大きい40、50代のリスキリングこそ不可欠であることに多くの企業は気づいており、同時に課題を抱えています。経営学者で早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏も、厚生労働省労働政策審議会にて「40代なかば以降のリスキリングが日本全体に求められる」旨指摘しています。
20、30代に提供しているリスキリングプログラムをキャリアステージの異なる40、50代社員にそのまま適用しても、なかなかうまくいきません。たとえば、50代社員にプログラミング言語のPythonを習得させたとしても、そのスキルを十分に発揮できる処遇やポジションを用意することは年齢が上がれば上がるほど難しくなります。なんとなくデジタルスキルを身につけてほしいと言っても、その先にどんな役割・責任をベテラン社員に期待しているのか、会社として明確に提示できないようでは、ベテラン社員本人も当然モチベーションは上がりません。
日本型雇用制度に端を発するこの問題は根深く、結果的に40、50代に対するリスキリングといえば、従来からあるEラーニングやセカンドキャリア研修くらいしか選択肢がありませんでした。しかし「Eラーニングを導入したのに誰も見てくれない」「研修を実施しても、受けて終わりで効果が見られない」というお約束のオチがつきものでした。
そこで最近注目されているのが、副業推進による実践的なリスキリングです。一昔前は、従業員の副業を禁止する会社がマジョリティでしたが、22年に経団連が実施したアンケートによると、副業を認めているあるいは今後認める予定の企業は83.9%にのぼっています。さらに昨今は、副業を単に認めるだけではなく、人材開発の手段としてむしろ奨励する時代にさえなっているのです。