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「食っていけそうな業界」を自分なりに考える

リカレント教育やリスキリング(スキルを身に付け直すこと)には落とし穴があります。「学び直すこと」それ自体を目的にしてしまうケースです。とにかく何でも学んでおけば、何らかの役に立つだろうという考えで学びに投資したものの、その学びをうまくキャリアに結び付けられないというケースが多いのです。

大切なことは、「どのようなキャリアを身に付けていきたいのか?」「それは自分にフィットしているのか?」という目的を先に考え、そしてそのために必要な学びは何かを考えるという順番を間違えないことです。学び直しはあくまで目的をかなえるための「手段」に過ぎません。

しかし、「何を目的にすればいいのかピンとこない」という人もいます。そんな人はぜひ「向こう何十年、どんな世界でならば飯を食っていけるのか」ということを、自分の頭で考える作業が必要です。

例えば今30歳ならば、平均寿命で考えれば、ほとんどの人はあと40年以上働く必要があります。向こう40年間飯を食っていくうえで、どんな業界のどんな仕事であれば需要が継続していそうかを自分なりに考える方法です。

とはいえ、正確に未来を予測するということは不可能です。日常で見聞きしているニュースなどをもとに、自分なりに仮説を組み立てて考えることに意味があります。気楽にいくつかの選択肢を挙げてみるだけでも思考回路は回り始めます。

あまり肩ひじ張らずに、考えてみてください。「紙媒体はどんどん部数が減少しているけれど、ネットメディアはまだ成長しそうだ」とか「ラグジュアリーブランドが苦戦しているけれど、ファストファッションや電子商取引(EC)は伸びしろがありそうだ」などというレベルで十分です。

そしていくつか挙げた中から、自分が比較的興味を持てそうなものは何か、力を発揮できそうなものはどれかを考え、その業界の有名企業はどんな人材を募集しているのかをチェックする。その中から自分の経験からできそうなもの、あるいは少し学べばできそうなものを選び、そこで活躍するための能力やスキルを強化する学びは何かを考え、挑戦していくという手順です。

もし自分で考え、学び、転職した結果、数年後に「やっぱり違っていた」と思うことがあれば、また同じことを繰り返せばいいだけのことです。そもそも何十年もずっと成長し続け、食べていけることが約束された業界や仕事を見つけることは不可能です。

学び直しにおいて絶対に避けたいことの1つが、安易に資格取得に動くことです。

そもそも資格があるだけで実務経験がない人を積極的に雇用する企業はほとんどありません。何かに役立つだろうからとMBA(経営学修士)や税理士の資格を取る人がいますが、同じことを考える人がたくさんいることもあり、キャリア形成に直接それが役立つことは考えにくい。

繰り返しになりますが、まずは、産業構造はこれからどう変化するのだろう、その中で自分はどんなことができそうだろう、それをやるために必要なスキルは何だろうと考えることです。そして、そのスキルが足りないとか、もう少し強化しておきたいという場合に、学び直しを行うということです。何歳になってもこの順番で考え、行動し、学び直しを繰り返すことで、人生100年時代の中でも長く活躍し続けることができるようになるはずです。

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