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難易度は上がるが、「産官学越境」に興味がある人もいるだろう。民間企業から任期付き任用を活用して官僚になる産官越境。また、大学との共同研究をしたり、母校でキャリア講座を持つといった産学越境などがある。民間で身につけたスキルや専門性は、分野によっては官公庁や大学でも十分に通じる。

もともと研究が好きで大学に残りたかったけれど、ポストがなく民間企業に就職した、という話を耳にすることがある。通常のルートで大学教授になろうとすれば、博士論文を受理され、任期制の短期研究員のポストを経てから大学職員になるのが一般的で、簡単ではない。しかし近年、大学や大学院、社会人大学院などは、社会人経験者の知見を積極的に取り入れようとしているところが多いという。

著者自身、大学教授をしていた友人の授業で、「HRを軸にした企業変革」をテーマに大学生に教えたことがあるという。そうした機会も、産官学越境の1つだ。産から官や学への越境は、企業で働くのとは異なるやりがいや視点をもたらしてくれるに違いない。

越境によって得られる6つの効能

越境に挑戦する価値があるのは、多くの効能を得られるからだ。著者は6つをあげている。新たな経験から得られる「新しい知識」、「モノの見方の転換」、今までの場所での何かと越境先での何かが掛け合わされる「新結合」、人のつながりである「ネットワーク」、まったく知らない人の中に飛び込むことによって身につく「対人対応スキル」、そして「ワクワク感」だ。

越境には、勇気がいる。必要性を感じないとか、越え方がわからない、新しいことに興味がない、などの理由で、しり込みする人もいるだろう。本書には、こうした越境の「実行力不全」への対処法も記されている。まずは、自らと向き合う機会を持ってみる。組織の中でたこつぼに入ったまま満足していないか。もし越境の環境が整っていないのならば、人事部に提案してみてはどうか。できることは、いくらでもある。

越境に挑戦し、実際に転籍や転職に至らなかったとしても、今いる場所とは違う空気や人に触れれば、自身の立ち位置を確認したり新しい発見をしたりできるだろう。その挑戦を迷っているならば、本書が背中を押してくれる。

(情報工場エディター 前田真織)

情報工場 
 広い視野と創造力を育成する「きっかけ」として、様々な分野から厳選した書籍をダイジェストにして配信するサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を展開している。「リスキリングbooks」は、「SERENDIP」で培った同社ならではの選書力を生かし、リスキリングに役立つ書籍を紹介する。

CROSS-BORDER キャリアも働き方も「跳び越えれば」うまくいく 越境思考

著者 : 井上 功
出版 : ディスカヴァー・トゥエンティワン
価格 : 1,870 円(税込み)

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