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システムの発注者とITベンダーの意思疎通

書名にもある『システムを作らせる技術』。これまでのようにプロジェクトそのものをITベンダーなどシステム構築の業者に丸投げするのではなく、自ら主体的に現在の業務を見直し、改善すべき点を明確にすること、というのが本書で一貫して述べられている著者の主張です。

「お客様であるユーザーが、業者であるITベンダーをアゴでこき使う」という関係ではシステム構築はうまくいかない。ユーザーは業務のプロとして、ITベンダーはシステムのプロとして、有益な知識・知恵を持っているのだから、教え合うことでチーム全体のスキルをあげていくべきだ。
互いの領域を理解すればするほど、コミュニケーションの質やスピードが上がり、結果としてプロジェクトの質や生産性も上がる。プロジェクトの最中はスケジュールに追われて忙しいが、意図的にトレーニングの場を設ける。そういう時間をとることでモチベーションも上がるし、参加者がスキルアップすればプロジェクト解散後も会社に大きな財産が残る。
(T章 開発チームの立ち上げ 308~309ページ)

本書では、企業などが進めるプロジェクトの現状を時系列で、かつ段階に沿って詳しく説明されていますが、なじみのない用語や理論も含まれているため、一読しただけではその趣旨を完全に理解することは難しいかもしれません。ただ、業務改革の手順とシステム構築を全体として俯瞰(ふかん)できるという点で役立つ良書となりそうです。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・野崎剛

本書は、「システムのことはよくわからないが、何らかの変革プロジェクトに参加することになった人」を対象に、自分でシステムを作るのではなく「作ってもらうノウハウ」について、すべきことや陥りやすい落とし穴を余すことなく書く、というユニークなものです。

プロジェクトの立ち上げ期にフォーカスしたロングセラー『業務改革の教科書』の続編が作れないか、という打ち合わせを行った際に、白川さんから提案されたのが本書の企画でした。

ITプロジェクトの失敗は社外には伝わりませんが、実際には多くの企業で起きていて、「システムを作らせる技術」に対するニーズは大きいはずです。本書によって救われるビジネスマンは多いと思います。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ

著者 : 白川 克、濵本 佳史
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 2,860 円(税込み)

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