転職した元同僚の「新天地は楽しい」に惑わされるな
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転職した全ての仲間が転職後あなたの前に現れて「転職してよかった」と話すでしょうか(写真はイメージ)=PIXTA
働き方の多様化に関する情報を目にする機会が増えてきました。異業種への転職や起業・副業、フリーランスなど、自分の意志を貫いて自由に活動できるのは魅力的に映ります。いつかは自分もそんな働き方をしたいと思っている人も多いでしょう。
しかしそうした人は、どうせ無理だと自分を卑下しているケースが少なくありません。例えば転職。転職して新天地で生き生き働いている元同僚は度胸もチャレンジ精神もある、一方の自分は転職活動をしたいと思い続けているけれどなかなか始められず現職にとどまっている。どうして自分はこんなに意気地がないのか、と落ち込んでしまうのです。
このように転職に憧れがあるけれど一歩踏み出せないという方には、「いったん落ち着いて考えてみましょう」とお伝えするようにしています。実際は、転職で自分らしい働き方を実現している人ばかりではありません。
転職で成功した人しか報告に来ない
転職に憧れつつ自己嫌悪している人には多くの場合、うらやましいと感じる仲間がいます。半年ほど前に転職した仲間と会って情報交換したら、先方がするのは良い話ばかり。給与が上がった、職場が刺激に満ちて楽しいなど、現職と比べて全てが恵まれているように聞こえます。
こんなときこそ冷静に考えてみましょう。確かに転職によって給与が上がり、以前よりも生き生きと働いている人はいます。しかし転職した全ての仲間が転職後あなたの前に現れて「転職してよかった」と話すでしょうか。
転職してうまくいった場合は仲間に報告したいものですが、そうでない場合は報告するのが恥ずかしいと感じる人も多いでしょう。または激務に追われて、報告に来る暇がないかもしれません。
転職でうまくいかなかった人は古巣の同僚ではなく、古巣の人事担当に会っているケースもあります。「転職先でうまくいっていない、出戻りすることはできないか」と相談するのです。筆者の経験上、こうしたケースは決して少なくありません。
人事担当の対応は会社によってまちまちです。自分で決断して自社を去った人を再度受け入れるのは、その人の能力を自社が必要としていたとしても、すぐには決断できません。自社で働き続けることを選び、目標に向かってまい進している社員への影響を考えると簡単に出戻りを許すわけにはいかず、対応に苦慮することも多いようです。