開成出身経営者2人が財団を作った理由 ルビとリスキリングの意外な関係
リスキリングプレーヤーズ
左=伊藤豊氏、右=松本大氏
この夏、「ルビ財団」という一風変わった名前の財団が活動を開始した。ファウンダーはマネックスグループ会長の松本大氏。代表理事を務めるのは、人材採用支援を手がけるスローガン(東証グロース)の創業者で、現在はスタートアップ支援を中心に活動する伊藤豊氏だ。出版物やウェブサイト、街中の看板・標識などの漢字に「ルビ」をふり、より多くの人が「よめる」「わかる」ことで自らの可能性を広げられる社会を目指すという。
ともに開成高校から東大に進み、起業家の先輩後輩でもあるという二人。世間に名の通った経営者らが、いまなぜ「ルビ」の普及に取り組むのか――。実は「リスキリング」とルビも、大いに関係しているらしい。
いつのまにか本や新聞からルビが消えた
「ルビにはずっと強い思い入れがあるんです」。1963年生まれの松本氏はそう語る。父親が編集者だった実家には本があふれており、松本少年は書棚から気になった本を引っ張り出しては読みふけった。なぜ読めたのかといえば、当時は総ルビの本が多かったからだ。
特に覚えているのは園芸と世界美術史の本。いちごの苗を育てるのに、1時間に何ccの水がいるのか、肥料にはどういうものが必要で、どんな仕掛けがあるといいのか――。読めることで、化学や工作への興味がかき立てられた。
「美術史の本では絵画はもちろん、歴史や文化、いわゆるリベラルアーツを、パラパラと本をめくりながら知らず知らずに吸収していったんだと思います。でも、いつの頃からか本や新聞からルビが消えてしまったんですよね。なんてもったいないことだろう、いつか総ルビを復活させたいと思っていました」
ルビで漢字が読めることで、未知の世界の扉を開くことができる。逆に読めないとイメージがつかめず、思考も停止してしまう――。そう語る松本氏は、幼い頃に読んだ天才バカボンのエピソードが忘れられないという。駅前の映画館で「風と共に去りぬ」を見て帰ってきたバカボンのパパは、ママに何を見たのか聞かれる。漢字の読めないパパはこう答えるしかなかった。「とにりぬ、じゃー」。
これは笑い話ではなく、今の子どもたちや外国人も、バカボンパパと同じ立場に置かれているのではないか。
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