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入社前に比べ、出産理想年齢「遅くなった」5割超

「子どもがほしい」と答えた687人に、第1子の出産理想年齢を尋ねたところ、回答は22~33歳とばらつきがあったものの平均で27.7歳だった。そのうち、学生時代など入社前に比べ、出産理想年齢が「遅くなった」と答えた人が52.4%と半数超を占めた。「変わらない」は39.9%、「早くなった」は7.7%だった。理由としては「経済的な不安」「パートナーや家族などからの言葉」「仕事のやりがい」「長時間労働」などがあがった。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の矢島洋子さんは「入社前に思い描く出産の理想年齢と、入社後に考える現実との乖離(かいり)にこそ、若い女性が直面する課題がある」と指摘する。数年間働き続けるなかで先輩女性の姿を見て現実的な産み時を探り、「職場で仕事を覚えて一人前だと認められるまでの年数、子育てにかかる費用と自身の収入などを鑑みて、出産時期が理想より少しずつ遅れる」という。

冒頭の人材サービス会社勤務の女性(23)も、学生時代は「25~27歳ごろに1人目の子どもを産めれば」とイメージしていた。いざ入社すると「仕事でいっぱいいっぱい」。出産すると「最年少女性マネジャー」という目標から遠ざかるのでは、という思いもある。現時点では「出産は30歳ごろかな」と漠然と出産時期を後倒ししている状況だ。

自由回答からは若手女性社員らが出産後の生活に不安を抱いている様子も浮かび上がった。「給料がなかなか上がらず子どもを育てられる経済的余裕がない」(25歳・神奈川)、「子どもを産み育てにくい社会への不安」(25歳・北海道)、「今の日本で子どもを育てるのはリスクしかない」(22歳・大阪)、「仕事に慣れてからでないと無理だと感じる」(23歳・北海道)、などの声が寄せられた。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島さんは「若い女性の不安は『出産後の子育て』に向いている」と分析する。「賃金が上がらず、長時間労働も解消されず、子育て支援も脆弱なままでコロナ禍による不安も増している。若い世代の『自分の生活だけで精いっぱい』との声が聞こえてくるようだ」と話す。

「出産などを望む人の希望がかなうために国や企業がどのようなことに取り組むべきか」との質問に対して、1位は「女性の働きやすさ(長時間勤務の解消や育休の取りやすさ)」(67.2%)、2位は「子育て支援(待機児童解消や児童手当の増額)」(58.7%)、3位は「女性の賃金増」(46.4%)だった。

矢島さんは「少子化が進む中でも、子どもを産み育てることへの願望は根強い。国が子育て支援を積極的に進め、若い世代の不安を解消して産みたい人が望む年齢に第1子を産むことができれば、日本の低出生率が改善する可能性はまだある」とみる。

■希望に応えられる社会に
子どもを産みたいという思いを最優先して29歳で第1子を出産した私が、「母親になっていなければ違うキャリアがあったかも」と一抹のさみしさを感じたのは30代後半になってからだ。今の20代女性はどんなライフプランを描いているかを知りたくて調査をした。

7割近くは出産を明確に希望するものの、パートナーができないと悩む声もあり、コロナ禍の影響も感じた。出産は個人の自由だ。ただ希望を持つ若い女性が「これなら安心して産める」と思えるかどうか、その責任は社会の側にあると改めて思った。
(松浦奈美)
[日本経済新聞朝刊2022年8月15日付]

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