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考える力を鍛える読書とは

本書の主眼はあくまで東大生となっていますが、読書を通じて生きる力を得る点では、別に東京大学の学生に限った話ではありません。

少なからずいる知的好奇心にあふれた人はおおむね、実践していることだと思います。東大生だけが難解な、なにか特別な本を読んでいるわけではなく、その読み方・生かし方に工夫があるのだと著者は強調しています。

しかし、それを言うのは簡単。日々、読書を続け、しかも当人が意識すらしていないレベルで実践をしている、それが東大生の読書術の最大の違いといえるのかもしれません。

本を読んで、その1冊からさまざまな知識を吸収し、考える力を鍛える。そうやって難しく考えると、なんだか大変で、自分にはできないことのように、頭の良い人――たとえば東大生にしかできないことのように感じられてしまいます。
しかし、実際のところ、東大生は、「楽しいから」やっているだけなのです。さまざまな視点から読むと1冊の本がよりおもしろく感じられますし、より深く入り込んで、議論したり感想を言ったり書評を書いたほうが、楽しい読書ができます。それに、マンガや小説もただのファンタジーとして読むのではなく、現実の世界とつながるツールとして読んだりすると、爽快感があっておもしろいものです。
「勉強しよう!」と思って本を読んでいるのではありません。自分が楽しめる読書をするために、さまざまな読み方をしていて、そして自然と「読解力」や「思考力」を鍛えているのです。
(おわりに 338~339ページ)

読書というと、少し堅苦しくハードルが高い作業に思われるかもしれませんが、別にそれは夏目漱石や太宰治、マキャベリやボッカチオといった国内外の、いわゆる「古典」だけを通じて得られるのではない、漫画だっていいし「ライトノベル」でもいい。重要なことは、どんな素材であっても、そこから何を学ぶのか、どう生かすのか、生きる力に変えるために何をすべきかが問われている――。本書を読み終えるとそのことが強く心に響いてきます。

◆編集者のひとこと 日本経済新聞出版・永野裕章

今回の文庫化にあたり、著者がオススメする177冊を追記してくださりました。

具体的には、『藤子・F・不二雄SF短編集』『ヴィンランド・サガ』『九条の大罪』『3月のライオン』『BEASTARS』『新世界より』『会計の世界史』『翻訳できない世界のことば』『うつくしい数学』など、マンガやエンタメ小説、ビジネス書などの読みやすそうな書籍が多数取り上げられています。

余暇での娯楽から、ビジネス・教養・教育まで、様々なシーンで役立つ1冊です。「何か面白そうな本やマンガを探している」という方は、ぜひとも本書から探してみてください。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

東大生の本棚 「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 西岡 壱誠
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,100 円(税込み)

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