文庫コーナーで過ごす至福 小説は人間理解の手がかり
マネックスグループ社長 松本大氏(18)
ビジネスの視点朔太郎や古今和歌集も愛読
私は小説のほかに昔から詩を愛読しています。今も変わらず好きなのは萩原朔太郎や寺山修司,小説では坂口安吾。それらの作家の作品は、自宅の本棚のすぐ手が届くところに置いていて、繰り返し読んでいます。最初から最後まで読むこともあれば、拾い読みすることもあって、読み方はその時の気分次第です。もう一つ、私が好きな「古今和歌集」はちゃんとした解説付きのものを、会社の自席の後ろに置いて、時々めくっています。
こんな話をすると、古い本ばかり読んでいるように思われそうですが、新しい本も読みますよ。本は私にとっては友達のようなもの。昔話で盛り上がれる古い友達も、最近のトピックについて語り合える若くて新しい友達も両方必要です。特に私ぐらいの歳になると、リアルの友達から「この間、フラれちゃってさぁ」なんて恋愛の悩みを聞かされる機会はほとんどなくなりますから、その手の話も含めて、イマドキの世の事情を知るために、新しい本も読みます。やっぱり人間には刺激って大事なんですよ。筋肉だって時々ストレッチをしないと固まってしまうでしょう。それと同じで、人間の心や脳みそも、たまに刺激を与えないと石のように固くなってしまいますから。
中高年こそ読書を
そういう意味では、若い人は別に無理して本を読まなくてもいいのかもしれないですね。だってリアルの世界でいろいろ体験し、そこでたくさんの刺激や学びがあるわけですから。中高年こそ、自分が「骨董品化」するのを避けるために、本を読んだ方がいいんじゃないでしょうか。
私は編集者だった両親のもとで育ったせいか、本への愛着がとても強いんです。だから、書店に関しては、本に対する「愛」が感じられる店に出合えると、やっぱりうれしいですね。特に文庫本コーナーは、どういう作家を扱い、どういう並べ方をしているか、店による違いが大きい。そこに個性が現れますし、店の思想を読み取ることができるので、文庫本コーナーは、その店が自分と合っているかを見極めるのに役に立ちます。
あまり具体的な店名を言うのははばかられますが、メジャーどころで言えば東京だと丸善、京都だと大垣書店の京都本店あたりは好きです。特に大垣書店は、一日中いても飽きないように作られているので、すごくオススメです。