今どき東大生が憧れる就職先は「MBB」 官僚は人気薄
キャリアコラム官僚は人気下落 起業家は上昇
コンサルとは裏腹に人気が下がっているのが官僚だ。東大新聞の就職先ランキングでは、学部卒の中央省庁1位は財務省と総務省のそれぞれ15人、3位は外務省と経済産業省のそれぞれ10人。以前と人気官庁も入省数もそれほど変わってないように見える。しかし、「人気は年々下がっていると言われる。官僚はめちゃくちゃ大変というネガティブなイメージが強い。長時間労働だし、その割に給料は高くない。個人的な感想だが、官僚志望の学生は相当な覚悟があり、明確な問題意識を持っている人だと思う」という。
もう一つ、東大生の憧れの職業として話題なのが起業家だ。経産省がまとめた20年度の大学発ベンチャーの数は東大が323社。19年度の268社から急増しており、大学別では断トツだ。松尾豊・東大大学院教授が提唱する「本郷バレー」構想もあり、IT系の起業家が目立つ。
子供向けのオンライン読書教育サービスを手掛けるYondemyの最高経営責任者(CEO)で、東大経済学部4年の笹沼颯太さん。全国有数の進学校、筑波大学付属駒場高校の出身だ。高3の頃には全国模試で現役生の文系トップにもなった。かつての筑駒の成績上位層なら文1に進み、官僚や法曹などを目指しただろう。しかし、ビジネスがやりたいとあえて文2に進学し、大学3年生の時に筑駒時代からの仲間3人と起業した。
創業メンバー3人のうち1人は財務省にキャリア官僚として入省する。「周囲の友人から、官僚はとは問われなかったが、なぜ外コンを受けないのか」と不思議がられた。それほど東大では優秀な学生は外コン志望が当たり前とみられるようになっている。だが、笹沼さんは「人はそれぞれ、僕はあくまで起業家を続ける」と覚悟を決めている。起業はリスクの高い選択だが、松尾教授からも出資を受け、学内でも注目のベンチャー企業になった。
外コンも起業家も徹底した実力主義で、東大という学歴には依存できない。他の難関大学からも安定を捨て、チャレンジングな仕事に挑む優秀な学生が増えている。イノベーション(革新)で米欧に後れを取っている日本にとっては新たな成長への好機になるかもしれない。
(代慶達也)