皇宮護衛官がなぜエンジニアに? 星野リゾートに転職
myリスキリングストーリー「自力で作ったプログラムが動いたとき、これは楽しいと感じました。小学生の頃ビーズ手芸に熱中するなど、私には昔から『何かを作りたい』という欲求があったのですが、忘れていたその思いを呼び起こされたのです」

警察学校の卒業証書を受け取る盛林さん
憧れのエンジニアへ 仕事・家事以外は勉強に充てた
プログラミングを学び始めてから2カ月くらいたった頃、盛林さんはエンジニアへの転職をぼんやりと考えるようになった。
「当時の私は、エンジニアの仕事について知識がほとんどありませんでした。ただ、一般ユーザーとしていろいろなウェブサービスに触れていたので、それらを作れるエンジニアになれたらワクワクできるのではないかと思い、エンジニアに憧れるようになったのです。
そこで、ウェブエンジニアになるにはどんな知識が必要なのかネットで調べ、ウェブページを開発するための言語であるHTMLや、ウェブページのスタイルを指定する言語のCSSも並行して学ぶようになりました。また、ウェブサービスの運営に欠かせない、サーバーを構築するスキルやデータベースの知識も勉強しました」
エンジニアへの転職を考え始めてから、盛林さんは勉強に打ち込んだ。家事は夫と分担した上でできるだけ効率的に済ませるようにし、睡眠時間はきちんと確保。そして、できる限りの時間を勉強時間に充てていたという。
「皇宮警察の仕事は9時5時ではなく、24時間サイクルで行われます。そのため、非番の仮眠後の時間を使って参考書を読んだりしたこともありましたね。休日は、1日に10時間くらいは勉強していたと思います」
参考書15冊、質問サイトも活用
参考書を読むなどして、基本的には独力で学んでいた盛林さん。分からないことがあっても、ネットで調べて自分で解決することが多かった。しかし、どうしても解けない疑問にぶつかった時は、エンジニア向け質問サイトの『teratail(テラテイル)』にアクセスしたそうだ。
「例えばプログラムがうまく動かないと質問した場合、解決策だけでなく、プログラムが動く仕組みや背景について解説してくださる人もいて勉強になりました。また、多くの人が参照しているQ&Aを読むことで、幅広くて実践的な知識が身につけられましたね」
忙しい中で時間を捻出し、リスキリングをするのはたやすいことではなかったと盛林さん。そこで前に進む原動力となったのが、プログラミングが好き、楽しいという気持ちだった。
「もし、『プログラミングの勉強をしなければならない』という義務感や、『別の仕事に就いて今の仕事を辞めたい』という現実逃避のような気持ちが強かったら、やる気も出ませんし学習効率も高まらないでしょう。すると、挫折の危険性も大きくなると思います。せっかく学ぶのならば、自分が本当に好きなものに挑戦すべきだと思います。私自身も、プログラミングを始めた当初より、自作のプログラムが動いて面白いと感じ、さらに、エンジニアになれたら楽しそうだと思った20年夏以降の方が、ずっと勉強に打ち込めるようになりました」
プログラミングの勉強を始めてから転職を決めるまでの約1年間で、盛林さんは15冊ほどの参考書を読破した。また、エンジニア向けオンラインコミュニティやオンライン学習サービスで知識を蓄え、さらにオラクル社の認定資格であるJava Silverと、国家資格の基本情報技術者試験にも合格している。
「資格が直接、採用に結びつくことはありません。ただ、エンジニアになるためにしっかりと勉強してきたことを、採用面談時にアピールする材料にはなったと思います」
皇宮警察と星野リゾートの意外な共通点
必要なスキルを身につけていったことで、盛林さんはエンジニアになれると自信を深めた。そして20年の年末頃から転職活動を開始し、企業の情報を収集。そうした中で出会ったのが、星野リゾートだったという。
「星野リゾートを選んだ最大の理由は、チームプレーで働けることでした。選考前に星野リゾートの方と行った『カジュアル面談』で企業の説明を受けたとき、『旅は魔法』というミッションの実現を目指し、各部門が一致団結する雰囲気がありありと伝わってきたのです。
前職の皇宮警察で私は、上司や同僚たちと協力し合いながら警備活動を行っていました。そのため、サービスチームや調理、企画などさまざまな部門のスタッフと力を合わせ、一緒にサービスを良くする星野リゾートの仕事のやり方は、私に向いているし、楽しめると感じました」
盛林さんは21年3月に警察を辞め、同年5月、星野リゾートに入社した。現在は「情報システムグループ」に所属し、バックエンドエンジニアという肩書で働いている。業務の効率化を進めたり「顧客体験のデジタル化」の質を高めたりするため、社内システムの構築や改善を行うのが主な役割だ。