変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

このように、社員のキャリア構築意欲が薄く、仕事に対する受け身の姿勢が変わらないままでは企業側がリスキリングを声高にうたっても、社員はやらされ感を覚えるだけで効果は限定的 です(注1)。実効性の伴うリスキリングには、社員の自発的なキャリア形成意欲とセットで行うのが効果的です。

自発的なキャリア形成への啓発

リスキリングを進めるポイントは3つあります。①自発的なキャリア形成意欲への啓発②仕事に必要なスキル・マインドの明確化③主体的行動をとった人への機会提供です。

まず、「自発的なキャリア形成意欲の啓発」は、企業(自社)の置かれている状況を社員に説明する機会を設け、企業と社員、あるいは社員同士の対話を通じて自ら知識やスキルを再習得する必要があることを納得してもらうことが有効です。

昨今、社員との対話集会を開催している会社は増えていますが頻度と伝え方に課題があるように思います。1回のイベントで伝えるべきことを全て詰め込むと消化しきれない社員が出ます。

小さな対話の機会を増やし、自社の社風を考慮した効果的な伝え方で発信することが重要です(注2)。加えて、社員の大半は「この組織で何を成し遂げたいのか明確になっていない(どんなキャリアを歩みたいかという気持ちが薄い)」という前提で臨む必要があります。

あるべき姿だけを一方的に伝えるのではなく共感を得ることにフォーカスすることが重要です。

また、社員のキャリア意欲の啓発には、上司・同僚から業務遂行の特徴、志向性、強みを伝えあうような場を設け、 「○○さんのいいところは○○だから、○○のような仕事があっているのではないか」といった、自分の働き方の良い点に気づかせることも効果的です。

日本では人材育成の際に、仕事の課題(弱み)に目を向けることが多いですが、本来キャリアを意識させるには強みにフォーカスすべきです。そのためには、現場のラインマネジャーの育成力を強化することも必要です。 新卒の社員には、参考となるキャリアパス・キャリアモデルを提示することも効果があると思います。

仕事に必要なスキル・マインドの明確化

次に、「仕事に必要なスキル・マインドの明確化」についてです。日本企業では、業務遂行上必要なスキルを定義していない企業が多く、社員が何を学ぶべきかが曖昧になっています。

目指すゴールと現在地がわからなければリスキリングの効率は高まりません。「今後どんなスキルやマインドを身につけるべきか」を明らかにして社員がやりたいキャリアの輪郭を明確にさせる必要があります。

大手企業ではジョブ型雇用制度への転換の一環としてジョブディスクリプションを作成していますが、スキルに加えてマインドも明確にすべきでしょう。

例えば某大手自動車会社では、求める人材要件として表面上のスキル以上にマインドセットの転換(新しい知識を習得しなければこの先まずいといった危機感の有無)を重視しています(注3)。

主体的行動をとった人に向けた機会提供

最後に、「主体的行動をとった人に向けた機会提供」です。社内公募やFA(フリーエージェント)制度を活用して自ら手を挙げた人には優先的に異動配置させスキル習得の機会を与えることです。

自発的なキャリアを構築したいというマインドを持った社員に異動の機会を積極的に与えることは、社内活性化という点で有効と考えられます。また、自発的に行動しないと報酬は上がらずやりがいも感じることができないと社員に認識させる効果もあります。

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