米医療支える上級看護師、年収1500万円も 日本では?
キャリアコラム
NPには一部の診療行為も認められている
「あれ、唾液がうまく飲み込めないのかな」。北海道の病院にめまいを理由に検査入院した女性の患者がいた。患者さんの部屋に訪室すると、ゴミ箱に捨てられた異常な量のティッシュを発見した。
唾液がうまく飲み込めない、めまい、脳に異常が生じているのではと察知し、医師に報告した。磁気共鳴画像装置(MRI)で検査したら、延髄に脳梗塞が見つかった。医師と看護師の両方の目線と医学の基礎知識を持っていたから早期発見につながったかもしれない。
家族や地域の事情も配慮、患者と医師を仲介
青森県東部の病院に派遣された。この土地は「ながいも」が名物だ。80代の高齢女性は心臓弁膜症の疑いがあり、医師から他の病院で診療を受けるように求められた。しかし、筑井さんは、女性やその家族から「ながいもの収穫期なので、今は無理だ」と相談されていた。
失神歴を含む病歴や心臓超音波、不整脈などの検査データを収集、医師と相談し「どこまで待てるのか」を一緒に考え、治療の方向性を探った。結果、収穫期を無事に終え、診療を受けることができた。筑井さんは「医師は多忙、一人ひとりの患者の家族や地域の事情まで配慮する時間的な余裕がないことも多い。そこを補うのがNPの醍醐味だ」と話す。
大半の病院の医師や看護師は、初めてNPに接する人も少なくない。地域医療振興協会から派遣されると、まず当該病院で、「NPの役割」についてプレゼンテーションして、その後数カ月間、一緒に現場で働き、NPの仕事を理解してもらうという。「NPになりたいという看護師も増えた」という。
厚労省によると、医師の数は約33万人。統計上は他の先進国と比べて人口比でそれほど少なくいないが、平均年齢は50歳を超え、事実上臨床医から離れている医師も多い。
一方で、国は「財政難の中で少子化が進み、これ以上医師を増やすのは難しい。1人の専門医を育てるのに数億円単位のおカネがかかる」(厚労省幹部)という。
3人に1人は高齢者、高まるNPのニーズ
今後、20年間は高齢化率が上昇し続け、3人に1人は高齢者の時代が来る。筑井さんは「在宅医療のニーズも増えてくる。NPは看護と医学の融合を図るのが役割、医師と看護師のつなぎ役にもなり、活躍の場はこれからますます広がると思う」と強調する。
厚労省の関係者は「医師は高度医療を担い、NPが医療過疎地など地域で事実上医療を担うのは効率的だ。そう考える専門医は少なくないが、医師会などの反対は根強い」と指摘する。ある専門医は「正直言って看護師に一々指示するのはしんどい。ただ、ルール上、仕方がない面もある。うちの職場にも優秀なNPがいてくれれば、ありがたいが」とうなだれる。
職場環境が過酷な一方で、報酬は高くないとして看護師を辞める人が絶えない。地方では医師以上に看護師不足が深刻だ。米国のように高報酬のハイスキル看護師が活躍する日は来るのだろうか。
(代慶達也)